森のくまさん(恐怖) ②
「……ある日森の中、熊さんに出会った」
私はそうつぶやく。
でかいクマは私を睨む。運が悪いなぁ……。受付さんは「たまに薬草を取りに来た人たちを襲う熊がくるんですが運が相当悪くない限りこないので」っていうこといってたし運いいかなと思ってたからきたんだけど相当悪かった……。
今日ついてない……。
「ガルルルッ!」
熊さんは大きな腕を振りおろす。
私はラプラスの悪魔を発動。自動で避けてくれるので助かる。そして、逃げる! 無理だよあれ! 私じゃどうにもならない!
と、走って逃げようとするが、後を追ってくる。
「速い!?」
すぐに追いつかれてまた攻撃されそうになったがラプラスの悪魔が発動し勝手に攻撃をかわす。
熊さん速い!?
「そういや前にバラエティで熊の最大速度は時速60kmとか聞いたような気がする……!」
車と競争しているようなものだよね……。
戦って勝つしか突破方法はないの? 上手く逃げ切る方法……。ミキちゃんなら思い浮かぶんだろうけど私底まで頭よくないから思いつかないっ……!
「ひいいい!?」
野生のくまって怖い!
私は必死に逃げている。が、いまだに背後を取られ続けているままだった。ラプラスの悪魔の効果ももう少しでなくなるっ……!
「だ、誰か助けてぇ!」
と、その時だった。
「ソゥ様ぁ!」
と、ミキちゃんが駆け付けてきてくれた。
☆ ★ ☆ ★
馬車で移動していると何やら物音がした。
「なんか音するね」
「多分冒険者が魔物に追われてるのではないでしょうか。見てまいりますか?」
「私が行くよ」
私は馬車から降りて、飛行スキルを使う。
物音は確かここらへんでしたはず……と辺りを見回してみると、薬草かごが放置されていた。木がなぎ倒されていて誰かが襲われた様子。
……誰だろう。
と思って探したら熊を発見。そして、襲われているのはソゥ様だった。
「熊! お前何ソゥ様を襲ってんだァ!」
全力の魔法をぶつける。
熊は吹っ飛んでいった。そして、ポリゴンと化して消えていく。
「ソゥ様大丈夫ですか? お怪我は?」
「う、ううん! 大丈夫! ありがとう、ミキちゃん」
と、笑顔を振りまいてきた。
まずい。それは私に効く。やめてっ……! その笑顔を見せられたら私は昇天しちゃう……! 心臓が高鳴るような気がした。
「安心したよ……。ミキちゃんが来てくれて助かった」
「いえいえ! ソゥ様が襲われてるのならどこでも!」
「……私の騎士みたいだね。ミキちゃんが男なら付き合いたいくらい」
「タイ行ってきます」
「手術受けようとしないで!? ミキちゃんはそのままでも可愛いから!」
男になって結婚するんだい!
「でも、本当にありがとう。ゲーム内で死んだことはないけど死ぬのってやっぱ怖いね……」
「……たしかに恐怖はすごいですね。熊に殴られて死ぬのはちょっと怖いです」
「野生動物って怖い。私はやっぱり戦闘系には向かないなぁ。錬金術のほうが性に合ってるかもしれない」
と、苦笑いを浮かべていた。
人には向き不向きがあるから仕方ないとは思う。でも、そんな悲しそうなソゥ様みたくない……。ゲームだから戦いたい気持ちもあるんだろうな……。
……。
「ソゥ様戦闘慣れしてないだけですよ! 戦闘になれたら戦えるようになりますよ」
「ほんと?」
「本当です。よく言うじゃないですか。最初から上手くできる人はいないって」
「……私最初から上手くできてたけどなぁ。演技は」
「と、とにかく。戦闘は難しいので慣れないうちは厳しいですよ! 練習しましょう! 私と!」
「……そうだね。練習しよう」
ソゥ様は微笑んだ。
あっ。
《強制ログアウトをいたします》
次回からミキ視点に変更!