森のくまさん(恐怖) ①
夕波ちゃん……プレイヤーネームはユナミでやっているっていう。
勝負を受けたんだけど……。勝負内容をなかなか言ってくれない。バトルだと自信がないけれど、職業を鑑定してみると大工だった。
大工? 意外という印象は受けた。現実でDIYとか好きなのかな?
「……いい加減勝負内容を発表してよ」
「か、考えてる最中よ!」
私はマーヤたちからくるフレンドメッセージを返しながらそう聞くとそう答えが返ってくる。
私もまだ遊びたいんだけどなぁ。いつまでも待たされてるのは嫌なんだけど……。
「思いつかないんなら後日でいいかな? 冒険者としての依頼を受けたいんだけど」
「も、もうすぐで思いつくわよ!」
それさっきから何回も聞いた。
災難だなぁ。時間は有限なのに……。こう待ってる間も刻々と時間は過ぎていく。今日は一日オフだからできるけど普段は仕事とか学校があってできないし今日はみっちりやろうって決めてたのに……。
これのせいで潰すのはちょっと嫌だ……。けどそんなに知らない相手に怒ることもなんか申し訳ないし……。
「うーん……うーん……」
「普通にPvPでいいんじゃないかな」
「ダメよ! 私が負けること確定なのよ!」
といわれたら何の勝負するのさ……。
「もういくよ。今日一日ゲームやる予定だし思いつかないんなら後でにして」
「ちょ、ちょっと!?」
もう行くことにした。
申し訳ないけど今日は仕事とかそんなことを考えずにゲームしたいんだ。友達とかならいいんだけどそんなに知らない人に束縛はされたくない。
「真野ちゃんは怒らないって言ってるの嘘じゃない! 怒るじゃん!」
「そりゃ人間だしね」
大声を張り上げるユナミちゃん。
その大声に応えるように私は呟いた。まるで子供を相手にしてるようだけど相手は高校生だ。たぶん甘やかされて育ったんだろう……。
なんで売れないのかわかったような気がした。
ユナミちゃんに少しイラつきを覚えながらも私は薬草を摘む。
採取ポイントに行くと薬草があるというが、形がばらばらであり、自分で選別してもっていくらしい。形を覚えたけれど鑑定したら『薬草?』とはてなマークがつくのでギルドに持っていって識別してもらうらしい。が、薬草が多いほどもうかるし他の草があったら依頼料が少し減るらしい。
だから慎重に見分けないといけない。
「これ薬草だっ」
うん、教えてもらった色と形にそっくり。
目を凝らしながら探していく。四つ葉のクローバー探しているみたいだ。結構子供心を思い出す。小さいころは公園でよく探してた四つ葉のクローバー。結局見つからないで泣いたんだっけ。
「薬草って結構あるんだねー」
その時だった。
木が倒れる。そして、目の前にはデカいクマがいた……。




