宿屋
知らない森を進んでいくと村にたどり着いた。
もう太陽が落ち夜になっている。私はとりあえず村を見て回ることにした。外を出歩く人は少なく、みんな家ですごしている。
馬車が止まる宿……。牛がなく牛舎。農村という感じがすごい。のどか。
「宿屋とりたいけど元の世界と貨幣が違うだろうし使えないかもしれない」
野宿……はしたくなかったけど仕方ないかな。
私は、宿屋の建物の横に座る。そして、目をつむった。
「――きな」
誰かの声が聞こえる。
私は目を開けるとまだ外は暗かった。目の前にはおばさんがいて私に声をかけている。
「こんなところで寝ると風邪ひくよ」
「……そ、そうですね」
私は立ち上がる。
この宿の人だと思う。さすがに敷地内で無断で寝るのはまずかったかな……。体力はもともとマックスだし大丈夫だと思うけど夜になるとゲーム内でもちょっと眠くなる。
「すいません、勝手に寝てしまって……」
「それはいいんだけどあんたどうしたんだい? 寝る場所ないのかい?」
「え、ええ。まぁ。お金もないですし……」
「ならうち泊まっていきなさい。お金は仕事手伝ってもらうだけでいいから」
「い、いいんですか? ありがとうございます」
優しいな。
部屋に案内される。普通の部屋だ。ベッドしかないけれど泊まる分なら問題はない気がする。ありがたい。これ以上欲を言わないからここでいい。
「ほら、夜遅いからもう寝な。明日朝ごはんはいいの作ってやるから」
と、言われたので私はベッドに横になる。
そして、目を閉じると、朝になっていた。ゲーム内で眠るという感覚は結構すごいと思う。現実でも寝ている扱いになると言ってたなぁ。
脳が寝たと勘違いしているらしい。だからゲーム内で寝たら現実内でも寝ていると同じだということ。時間はこっちのほうが早いから微々たる時間しか眠ってないみたい。
こっちではたくさん寝てても現実では昼寝した感覚なのかな?
「お、起きたかい。ほら、朝ごはんだよ」
と、出されたのはスープだった。
キャベツやウインナー、ベーコンがあったポトフ。スープを飲む。うん、美味しい。こう洋風のスープも悪くない。
「ごちそうさまでした」
私は食器を持っていく。
と、厨房にはいかにも寡黙そうな男の人が包丁を握って立っている。ご主人様なんだろうか。
「おお、あんたかい。よく眠れたか?」
見ていることに気づいたのか話しかけてきた。
「は、はい。おかげさまで」
「ならよかった。うちの隣で寝て死なれたら困るからな。お嬢さん旅の人かい」
「まぁ旅……なのかな」
どうなんだろ。
旅といえるかはわかんないけど……。
「あ、そうだ。この国の名前ってなんでしたっけ……? 忘れてしまいまして」
「この国はシュプレーヒ王国だ」
「シュプレーヒ……」
アドバンス王国とは違う。
ワノ国はアドバンス王国の領土だしワノ国でもないところ。アドバンス王国じゃない……。異世界、そういったほうが正しいのかな。
異世界にどうやら来たらしいね。
「王都って近いですか?」
「近いな。馬車で一日もかからないだろう」
「そんなに……」
馬車で一日はかからないとなると徒歩だと時間かかるんだ……。
ミキちゃんならこっちの世界に来たら王都を目指すんじゃないかな? 予想だけど……。王都になにがあるかわかったら多分予測できるかな。
「王都には何がありますか?」
「冒険者ギルド本部があるな」
……ミキちゃんは冒険者ギルドに登録するんじゃないかな。
多分。王都が一番情報集まるだろうしそこでなにかやると思う。なら、私も王都に行こうかな……。
「ありがとうございます」
「お嬢さん王都行くのかい? 王都行くのなら昼の商人の馬車に乗せてもらうといいよ」
「わかりました。何から何までありがとうございます」
私はお礼を言って厨房を後にした。