盗賊退治
沈静したアルテナ様は天界へと帰った。
で、なぜベノムが来たかというとこの世界を担当する神がベノムになったからだった。ベノムは理解するためにこの世界を見て回るという。
「とりあえず王都目指そうか」
王都に何があるか尋ねてみた。
王都には冒険者ギルドとかいう異世界によくあるような施設があるらしくそこでクエストを探すことになるかもしれない。というかそっちで探したほうが楽だということだ。
とりあえず冒険者になるのが目的かな?
「冒険者とかますます異世界転生っぽいよ。異世界転生したっていうスタンスなのかな」
「わかんない……。けど、多分この階層がどの階層より時間かかるというのは事実」
「……なんで?」
「世界丸々第九層だとするとね? 世界各地を探してキークエストを探すんだよ? 比じゃないよ? 今までと比べると」
今までもデカいと思ってたけどその比じゃない。
ほんと運営はこういうことするのかよ……。
「……この国が、じゃなくてこの世界が?」
「この世界が」
こんな異世界みたいなのに隣国まで行くのにボスを必ず倒す必要がある、とかそういうのは考えにくい。そんなんあったら不便だと思うしそんなボスがぽんぽん湧く世界もおかしいと思う。
「……もうこの世界を楽しんだほうがいいかもなぁ」
次の階層に行こうと躍起になって探すよりゆっくり探したほうがよさそうだ。
道を歩いていると、目の前に馬車が止まっていた。本の紋章が書かれており、馬車の周りになにか人が溜まっている。盗賊だろうか。
「チリン」
「わかった」
チリンは盗賊らしき人たちのほうに向かっていった。
「なにをしている」
「あぁん?」
剣を構えている。盗賊で間違いなさそうだ。
チリンは剣を構える。
「こいつやる気だ! やっちまえ!」
と、誰かがいった。
盗賊がチリンに襲い掛かっている。その隙を見て私は馬車の中を覗き込むと女の子が奥で鎧を着た人に駆け寄っていた。
「グレン! 目を覚ましてください! グレン!」
血がでている。
とりあえず私はその騎士に近づいていく。
「な、なんですかあなたは! な、仲間ですか盗賊の!」
「いえ違いますよ」
私は騎士に触れ、回復魔法をかける。
傷がどんどん治っていった。うう、とうめき声をあげたのをみて死んではいないようだった。
「グレン!」
女の子はグレンをいう騎士に顔を近づけた。
「ミキ、終わったよ」
と、チリンが馬車を覗き込んでくる。
「……えっと、治してくれたのですか?」
「う、うん」
女の子はこちらを向いて恐る恐る聞いてきたので答えた。
「あ、ありがとうございます。盗賊ではないのですね」
「まあ、はい」
「盗賊は私が退治してやった」
チリンが誇らしげに胸を張った。
「それは……ありがとうございます」
少女は笑った。




