アルテナ様のマジギレ
ガブリエルが天界へ帰った。
……帰れるんだ。私はどう帰るかわからないけど。
「素晴らしいものが見られました。アルテナ様。ありがとうございます」
女魔法使いが天へ祈りを捧げていた。
住民たちもそれに合わせて手をあわせている。お祈りが今までアルテナ様に届いてなかったとなるとそりゃ怒られるわ。神からも人からも。強く生きろよガブリエルたち。
「では、私はこれで」
「ありがとうございます魔法使い殿」
と、その時だった。
女魔法使いが帰ろうとフードをかぶった。その瞬間、目の前に人が現れる。ガブリエルとウリエルの首根っこを掴んででてきたのはアルテナ様でミカエルの首根っこを掴んでいるのはベノムだった。
二人がどうしてここに?
「あ、アルテナ様!」
と、女魔法使いがまた頭を下げる。村の人たちも頭を下げた。
「ミキ様。この世界にいましたか」
「あ、う、うん」
「世界からいなくなったと思ったらこの世界にいたのですね」
ラファエルも今現れてふふっと笑っていた。ラファエルは真面目だよな……。今まで誰にも怒られていなさそうだしな……。
「まぁ、ミキ様。今は少しお待ちくださいね」
と、アルテナ様は村の人たちのほうに歩み寄る。ベノムは私の隣に立った。
「……悪かった」
と、謝ってきた。
……今更謝るとかそういうことは言わないし、すでに謝られたと思ってたけれど……。まあ、嬉しい。
「いいよ」
私がそう言うとベノムはふっと笑った。
「ほら、謝りなさい」
「す、すいませんでしたっ」
ガブリエルとウリエルは土下座していた。綺麗な土下座だなぁ。あの顔はマジ切れしてるしな……。怖い。あんなマジギレするんだ。オルテナ様以来のマジギレか……?
ちょっと背筋がひんやりとした。
「ど、どうなさったのですか?」
「あなたがたの祈りが私の元に届いておりませんでした」
というと、村の人たちは目を丸くしていた。
「ウリエルの職務怠慢です。ただもとはといえばミカエルとガブリエルが仕事を押し付けていてする暇がなかったのもありました。その謝罪に参りました」
「そ、そんな……。頭を上げてください!」
「ウリエル、ガブリエル。頭を下げ続けなさい」
怖い……。
「ラファエルが祝福をしていなければこの世界は終わっていたのです。皆さまはどうぞお怒りください」
「え、でも……」
「私たちが職務を放棄すると世界の一存に関わるのです。けじめはきっちりとつけないといけません。どうぞ」
ラファエルはふふっと笑っていた。
ラファエルが陰でやっていたのか……。黙っていたのも怒られないためだろうけど……。一番の功労者はラファエルじゃん……。
ラファエルはほんとご苦労様だったな……。
「アルテナ様。そろそろ許してあげてください。私も黙っていたのですから」
「……ラファエルは優しいですね」
「仲間が怒られてるの見ると私もちょっと嫌ですから」
ラファエルが庇い、ウリエルとガブリエルは頭を上げた。
ミカエルはまだ首根っこを掴まれたままだ。しゅんとして喋らない。
「……マジギレ怖いな」
「……だろう?」
「受けたことあるのか……」
「昔カーリに怒ってる姿を見ただけだ」
カーリ様もなにかやらかしてそうだもんなぁ。
私が見ていると騒ぎに気が付いたチリンが隣にやってきた。
「どうしたのこれ」
「アルテナ様がキレてる」
「……まじか」