ガブリエルへの頼み事
ウリエルたちを少し叱った。
「とりあえずこの世界の人間は逞しいですね」
神の加護もなく地道に暮らしているという点が逞しいというんだろう。いや、職務怠慢が主な原因なんだけどな?
だけど、毎年祈りを捧げてる魔法使いがいるのはさすがに可哀想だ。願っても届かないのに……。
「って、そういえばミキ様、羽根は?」
「羽根?」
私の背中をさする。
羽根がなくなっていた。え、どこやったんだ私の羽根!? しまえなくて邪魔だったあの羽根がどこかに消えた!? と思うといきなりぼふんと出てきた。
……え?
「……しまえ」
と、羽根が消える。
どうやら消えるようになったらしい。それはちょっと嬉しい。けれど羽根をもぎ取ることはできなさそうだな。
なんで誰もこれに指摘しなかったんだろ? チリンでさえも……。
「しまえるんですねそれ」
「アルテナ様もしまえるから当然でしょう」
アルテナ様にも羽根あるんだ……。
「とりあえず私は戻ってこの世界の管理をしなくてはなりませんね。ガブリエル。案内してあげて」
「わかったよ。この世界でもいろいろと本のネタになりそうなものありそうだしね」
ウリエルは帰っていく。
「さて、じゃ、まず魔法使いのところにいきますか」
あの魔法使いの人にちょっと話を聞きたいからね。
私は村長さんの家を訪ねる。
村長さんは魔法使いの人と笑いながらしゃべっていた。楽しそうだし水を差すわけにはいかないので黙っておくと魔法使いの人がこっちを見た。
と、目を見開いて驚いている。
「天使!?」
「あ、ガブリエルに驚いてたのか」
隣に立つガブリエルに驚いているらしい。村長も気づかなかったのか驚いている。
「天使様……!」
と、いきなり頭を地につけていた。
ガブリエルはいきなりのことで驚いている。
「いいよ頭を上げて! そういう堅苦しいの無しでいこう? ね?」
「はい」
堅苦しい感じは未だに残っているが、頭を上げていた。
そして、ガブリエルは地面に座る。
「天使様を地面に座らせるわけには! 椅子どうぞ」
村長が椅子を差し出してくる。
ガブリエルはそれに座る。私の椅子はないため立ったままだった。それに気づいたガブリエルがどうぞと席を譲ってきたけど断っておいた。
「ガブリエル様。なぜこんな辺鄙な村に……」
「……神様に呼ばれたからですかねえ」
「アルテナ様がこの世界に遣わしたのですか!」
「いや、アルテナ様ではないですけど……」
まぁ新参者の私の名前は知らないだろう。
元の世界だと結構知れ渡ってるんだけどな?
「ガブリエル様。どうか今年も豊作にするよう神様にお言伝を頼めないでしょうか」
「別に構いませんが……」
ガブリエルが困ったようにこちらを見てくる。
堅苦しいのをどうにかしてくれと言いたげだ。そういう性格なんでしょう。なら私にも無理ですね。諦めろ。ガブリエル!
「……ミキ様。これ絶対アルテナ様怒りますよね? 私たち叱られますよね?」
「…………」
「も、申し訳ございません! 本来は私から頼むべきものを!」
「いや、そっちは別にいいんだけど……」
たぶん放置していたことがばれるんだろうな。
今までどう誤魔化してきたのかはしらないけれど創ったのがアルテナ様なら報告もしなくちゃいけないはずだしな。
「……よし、サンダルフォンに持っていかせますか!」
「叱られてきなよ……。骨はラファエルが拾うから」
「そこはミキ様が拾ってほしかったぁ……。まぁ、多分一番叱られるのはウリエルでその次に私とミカエルでしょうけど……」
「…………」
「もとはといえば私のせいでもありますからね。腹くくります……」
「……がんば」
ガブリエルの無事を祈った――