災厄 ⑤
ベノムの体力を削っていく。
カーリ、オルテナが加わっても苦戦の一方だ。
「ミキ! 回復よろしく」
「オーケイ! 回復」
私は回復に専念していた。
攻めることができるのなら攻めたいけれど無理だ。プギーとかがいればよかったんだけどね。プギー自体回復役だからオズとプギーで回復に回ってもらえればなんとかできたけど……!
いないのだから仕方ない。蘇生もできるから私のほうがいいだろうけど。
「”勇者の一撃”」
ロトが大きく剣を横に振る。
すると、大きくのけぞったベノム。ノックバック効果があるらしい。ナイス!
「お腹を狙うんだ!」
「たやすい」
「はああああ! 暴食の獄」
ベルゼブブの手が口に代わり、腹部へと攻撃が向かっていった。
「お前を食べてやろう。俺様は今ものすごくお腹が空いているんだ」
ベルゼブブの攻撃が決まる。苦しそうに暴れ、遠心力のせいかくっついていたお腹からはがれて、地面に落下していった。
ベルゼブブはすぐさま避難している。
「っと、こいつぁてめえのプレゼントだ! 受け取りやがれ!」
と、ゴエモンが何かを投げた。
「名付けて、千両大花火といったところかねえ!」
その飛んでいった球体は足下で思いきり爆発を起こす。
威力がすごい……。何発もあるようなもんじゃなさそうだ。たしか私もこのスキルあったような…。あ、もらってる。このスキルはもらってるわ。
「たーまやー!」
「ランスロット。いくぞ!」
「はい。アーサー王」
二人の騎士がベノムに素早く近づいていく。
アーサー王が左前足、ランスロットが左後ろ足。思い切り切り上げて転ばせようとしているらしい。できるのか?
祈るしかない、かな。
「はああ! 聖杯よ、力を貸してくれ! エクスカリバー!」
「湖の乙女。アロンダイトに聖なる力を与えたまえ」
剣が光る。
そして、二人同時に切り上げた。すると、足が持ち上がり、横転したのだった。できるじゃん! すごいアーサーとランスロット! ナイスだよ!
「今だよ!」
『動けんっ……!』
二人の剣が持ち上げて倒したんだ。これはすごいとしか言いようがない。
『小癪な……! だが、面白い! 血肉が沸きあがる戦いをしたのは数千年ぶりだ!』
「ああ、妾とアルテナが手を組んで其方を封印したときか」
カーリ様も関わっているらしい。
「ま、もう封印なんて甘いことはせぬ。そなたは危険因子。邪神の名のもとに殺してやりゅ……殺してやるのじゃ!」
「大事なとこで噛まないでくださいよ……」
せっかくの雰囲気が台無しですから。
「……ここからは妾は本気で行くぞよ!」
「……私も本気!」
と、カーリの姿がどんどんと代わっていく。身長が伸び、髪が伸びていく。軍服を着た邪神カーリが、そこに立っていた。冷酷な目をしていて、ものすごく畏怖の念を持ってしまう。
邪神ちゃんの本気は、怖い。
一方のオルテナ様は、光っていた。
カーリ様が闇だとすればオルテナは光。相反している。
『カーリのその姿! 久しぶりだ! 面白い。体力も半分しかないが、私も本気を出そう! 邪魔するな! 人間よ!』
と、プレイヤーが固まったかのように動かなくなった。
ゴエモンたちも動けなくなっていて、私、トロフィ、マシュマロ、ニル、ミソギ、ロトだけ動けるようだった。ルシファーも、誰もかれも動けていない。口だけは動かせるみたいだ。
『ここからは神同士の戦いと行こうじゃないか! なぁ、主神様よ!』
「なるほど。神じゃない人たちは動けなくしたのね……」
ここからは神々の戦いだ。
神である私たちは動けるのは当たり前、といったところだろう。神じゃなければ動けないのだから。
「オルテナ。いくぞ」
と、邪神カーリ様がオルテナと一緒に攻撃を繰り出した――