災厄 ④
今回は外の様子です。ソゥ視点です。
魔物が突如人間の街を襲いだした。
私がログインすると惨状がひどい。噴水広場や他の場所にも魔物がたむろしている。なにっ……この状況は……。
「ソゥ!」
「マーヤ!」
二人でこの惨状を眺める。
私たちが仕事でログインできていない間何があったの? 仕事が早く終わったからマーヤの家でやってるけど……。
「ね、ねえ! この惨状なに!?」
近くのプレイヤーに聞いてみた。
「ワールドクエストだよ! ラスボス戦! 終わったと思いきやまたこっちがあったんだぜ! ミキたちは何してるんだ!」
ミキちゃん……?
ミキちゃんはログインしている。けど、戦っていないの? ミキちゃんのことだから何か厄介な敵と戦ってるんじゃないのかな……。
「ぐうううう!」
「か、加勢しよう! マーヤ!」
「あ、うん」
モンスターがはびこる街。
私は、杖を構えて戦うことにした。防御力は黄金化で底上げして。精霊魔法を使えるようになった今火力面も申し分ないようにはなっている。ただ、進化もしてないから戦力になるかはわかんないけど……。
「っと、マーヤ! あぶない!」
マーヤの後ろに、モンスターが立っていた。今にも手を振り下ろしそうで、マーヤはそれに対応できず……
「っと。ソゥ、マーヤ。大丈夫かい?」
死ななかった。
マグダッド君がナイフを投げて倒してくれた。それに思わず地面に座りこんでしまう。さ、さすがに怖かったぁ。マーヤが死にそうになったのもちょっと怖かった。
「油断大敵。今この街には安置なんてないから」
と、目の前を見据えてそういった。
安全な場所がない……。どこもかしこも戦場と化してるわけ……?
「まぁ、ミキちゃんがなんとかしてくれる。多分、ラスボスと今戦ってる」
「へ?」
「ついさっきまで俺も戦ってたんだ」
ラス……ボス?
「多分ラスボスを完全に倒したらこれは終わる。早く終わることを祈るしかないよ」
「……勝って。ミキちゃん」
仕事がなければ私も戦えた……なんて思うけど足を引っ張るだけだろうな。ミキちゃん強いから。私に傷つかないよう守ってくれるだろうけど、それじゃ嫌だ。私も、ミキちゃんを守りたい。
仕事の合間を縫ってどんどんやってこう。仕事がなけりゃ私もやれたんだけどな十分に……。
「私たちは私たちでこっちをやるしかないわけね」
「そういうこと。マーヤちゃんなら余裕でしょ?」
「さぁ。わかんないけどやるしかないんでしょ」
「その意気だ」
マーヤとマグダッドが背中を合わせる。
お似合いだなー……。私が男だったらミキちゃんと背中を合わせて……。想像したらちょっとよかった。
「ハーメルン! 住民は避難させたか?」
「ばっちり。周辺の警備は強化したネズミに任せてる」
と、その時だった。
上に黒い影が差す。
それは、ドラゴンだった。デカいドラゴンが真上を飛んでいる。
「オルド! 魔物殲滅するよ!」
『わかった』
あれはチィちゃんだ。私のファンの一人で、ミキちゃんの友人。あのドラゴンがいると助かるなぁ。強そうな人が来るとちょっと安心するよね……。
「コマチはハーメルンが強化したネズミと同じ仕事!」
「あいにゃ!」
チェシャ猫のコマチにエイシェントドラゴンのオルド。頼もしい二匹だ。
「この調子で乗り切ろう!」
私にもできることをやろう。メインの戦地はここ、噴水広場だ。大勢のプレイヤーが戦っている。
私は、噴水広場の噴水の上に上る。そして、隠していたフードを取った。私は女優だ。少なくとも有名だから、元気になってほしい。
「あ、あれは……」
「ま、まじで?」
そのような声が聞こえてくる。
「私は、女優の生出 真野です! みなさん! 頑張りましょう!」
そういうと、
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」
と、大きな歓声が響き渡った。
私ができるのは士気をあげることくらいだ。有名税をここで生かす。
「生真野ちゃんだ!」
「真野ちゃんのために頑張るぞ!」
「えいえいお!」
と、みんなの強さが上がったのか、どんどんと攻撃を繰り出していた。
「士気があがったね。さすが国民的人気女優」
「はははっ」
さすがにここまで好かれているとは思わないけど……。