災厄 ③
バリアが厄介だ……!
と、その時だった。ベノムの上の空間が開く。
「はああああ!」
と、何かが勢いよく落ちてくると、そこにいたのはオルテナ様と邪神ちゃんだった。
え、駆け付けてきてくれたの?
「絶好調! ミキ様! 助けに参りましたよ!」
「ふはははは! 我が親友のミキを助けなければ親友と呼べないからのぅ!」
神が二人……。
オルテナ様も一応は創造神だ。今はこの世界で旅しているからなんともいえないけれど、二人が駆け付けてきてくれたことはでかいかもしれない。
「アルテナ様は?」
「お姉さまは少しやることがあるそうです! お姉さまが手助けをしろということで! 無理やりこの世界に入ってきたんですよ!」
「ふはは! 邪神カーリをなめるでないぞ! 妾も力はあるからのぅ!」
突如現れた邪神ちゃんともう一人の神に驚いている人が多かった。
「だがしかし、破壊神……。こいつは妾とアルテナが封印していたはずなのじゃ。誰かがそれを解いたとしか考えられぬが……」
「犯人捜しは後にしましょうよ。それより、まだ死んでないですよ」
「そうじゃのぅ。ベノムは恐るべき神じゃ。力はアルテナ様に匹敵するからのぅ」
そうなんですか……。
『邪神にオルテナか……。私をいまさら止めにきたのか?』
「そうじゃ。世界を壊させるわけにはいかないからのぅ」
邪神ちゃん……。カーリ様がベノムを睨む。
『どんどんと人間の世界の勢力が弱まっていく。それでよいのか?』
「ど、どういうことじゃ?」
『こういうことだ』
と、突然宙に画面が浮かぶ。それを私たちは見ることになった。
今のうちに攻撃を……と思ったが、その光景を見て、言葉を失ってしまった。第一層エリアが、燃えている。他の階層もみんなみんな……。
いや、生きている人はいた。だがしかし、この惨状は……。
『私の魔力が魔物どもを強化したのだ。魔物どもは今も人間の街を襲っている。人間が大事だというのなら私と戦わず人間を守ればよかろうに』
「なぁっ……!?」
この惨状は……。
勇者が奮闘し、ガガトツなど死んだ王や、参戦してない王、ハーメルンが戦っていて、グィネヴィアも人々の回復に専念している様子が見えた。
「な、なんだよこれ……」
ストレングスはそうつぶやいていた。
『ぐうう! ネズミたち! 人々を避難させろ!』
『皆様! お気を確かに! けがは私が治します。負傷者の皆様は私の元へ!』
グィネヴィアとハーメルンが映される。
『はあああ! メテオー!』
「マーリン!?」
「マーリンじゃないか!」
アーサーとランスロットが反応した。
マーリン……。
『なんだか知らねえが力が湧いて出るぜ!』
た、大罪!?
大罪はまずい……。力が違いすぎる。それに、こっちには戦えるNPCは大体連れてきている。相手する人がいないと思うが……!
『そこまでだぜサタン様よぅ!』
『マモンかよ! そこを退け!』
マモンとサタンが対峙していた。
『あらぁ、クロック。邪魔するの?』
『邪魔するに決まっているだろう。我が主人はそれを望んでいないのでな』
ベルフェゴールとクロックが対峙していた。
クロックがいたか……! だがしかし、カイザーコングなどのボスはどうなった? ベヒーモスは? と思っているとベヒーモスの姿が映る。
ベヒーモスはカイザーコングを吹き飛ばしていた。
「……味方なのか?」
あれが敵でさらに強化されたら勝てないと思うんですけどね……。
『ひどい惨状です……きゃっ』
「コマチ!」
と、ゴエモンが心配そうに身を乗り出している。
『そこのあなた大丈夫ですか!?』
「ウリエル……!」
『私は戦えません。ただ、モンスターのいない天界に皆さんを運びます。ぜひコマチさん。私と一緒に天界へ!』
『う、うん……』
ゴエモンはほっとしたように胸をなでおろしていた。
そして、映像が途切れる。
『この外の世界でも私の力を受けた魔物たちが活発化している。滅ぶのも時間の問題だろう』
「クエスト名災厄ってこのことか……」
たしかに災厄の名の通りだ。
『人間を思うのなら私に構わず人間界を手伝えばよいのに。人間の勢力がどんどん弱まっていくことこそ滅びの時だ!』
「ぐぅぅ……! オルテナ! ここはっ……!」
『行かせん。オルテナとカーリは此処に残るのがいいさ』
「……どうしても行きたいならベノムを倒すしかないようだね」
『その通りだミキよ! 一刻も早く私を倒し向かうがよい!』
なるべく早く倒さなくちゃならない。それは辛いな……。
まだ体力も三分の二くらい残っている。半分も切っていないのに……。どうしたらいいんだろうか。
どんどん手間取るほど滅びに近づいていく。
人間界に残ったプレイヤー、勇者、ハーメルンたちの奮闘次第。




