災厄 ②
ベノムは大きく咆えた。
そして、口に何かを溜めている。ファイアだろうか。飛行スキルを使用! なんとなく嫌な予感がするから一応クー・フーリンを抱えておこう。
「今攻撃したいが、近づくとあれの餌食だよな……」
「嫌な予感がするわね……。一応避難しておくわ……」
残った人たちも回避を優先したらしい。ここで凸っていくバカはいないだろう。近づいた途端に何かがやられるのが目に見えている。だがしかし、近づかないとわからない。
ならこれしかない。
「分身!」
私が四人に増える。
そして、二人がベノムの元に近寄っていく。ベノムは足をじたばたさせて私の分身を踏みつぶしていた。分身はポリゴンと化して消えていく。
やはり近寄っても無理、ということは……嫌な予感がする。
この異常なまでのため時間。
「みんな! そこあたる! もっと広がって!」
その時だった。
ついに、炎が吐かれる。闇色に染まった炎は長い時間デカい範囲を燃やし尽くしていた。チリン達はギリギリ避けている。私は飛んでいるからいいのだが、地面にいるとよけづらいだろう。
ルシファー、ミカエルはゴエモンとアーサーを掴んで飛んでいるし、ベルゼブブはランスロット、オズはアリスを連れて飛んでいる。
「っぷはあ! なんだよあれ! 範囲広すぎるだろ!」
「しかも長い時間だから当たったらただじゃすまなさそうだね……」
飛んでいた人たちが地面に降りる。
「さて、本格的にダメージを与えていかないとねえ」
まずは弱点を探らないと。
ドラゴンというのはネット情報によるとどこかに逆鱗というものがあってそこが弱点らしい。逆鱗は色が違い、向きが逆になっているとか。
「ククク……毒沼」
と、ベノムの足が毒の沼に沈んでいく。
ミソギが変えたらしく、ずぶずぶと沈んでいくが、意味がないようで思いっきり腕を振り上げて、地面に下ろした。
「足止めは無理そうね……」
「俺がいく」
ストレングスが素早く近寄っていった。
大剣をおもいきりぶん回し、投げていた。投げた大剣は弧を描き、ストレングスの手元に戻っていく。これは無双系だっけ?
まぁいいや。それほどダメージはいってないし。
「タンクは私が受けるよ」
「チリンさんだけに任せらんねえ。私も受けるぜ」
チリンとマシュマロが攻撃を受けるらしい。
「デコイ!」
デコイを使うとベノムがチリンのほうを向いた。
そして、足で踏みつぶそうとしている。チリンは大盾を装備し、その足を受け止めていた。チリンが押されているが、耐えている。
「”機械武装”」
と、チリンの腕に何かまとわりついていた。機械の腕。
「ありがとねマシュマロ! ふぬうううううう!」
「ロト、ストレングス!」
「あいあいさー!」
近接攻撃の人たちが近寄っていく。私もベノム周辺を飛んで弱点を探すことにした。すると、すぐに見つけられた。腹の真ん中。一つだけ白くなっていて逆さになっている。あそこが弱点だ。
私は思い切り精霊魔法で逆鱗を攻撃する。と、ベノムは後ずさりしていった。
「ガァァァァァ!!」
痛そうに咆えるベノム。体力も少し削れていた。精霊魔法の威力も威力なので結構な大打撃にはなっただろう。
精霊王をなめるなよ!
『この痛さ! 燃える展開だ!』
ベノムは翼を使って羽ばたく。
そして、私たちに足を向け、思いっきり落ちてきた。みんなが避難する中、ゴエモンだけは逃げていない。なぜ逃げないんだろうか。
「見えた! 逆鱗があったぜ!」
ゴエモンはどこからか火縄銃を取り出した。
そして、一発。ゴエモンが放った弾丸は逆鱗に見事命中した。
「やりぃ!」
腹を貫かれたことによってベノムは大きく体勢を崩して落下してくる。横向きで倒れており、気絶しているようだった。今のうちに攻撃するしかないだろう!
ストレングスたちは近づいていき、そして、攻撃していく。
だがしかし、嫌な予感がした。
体力が三分の一削れただろうか。その時、ベノムは起き上がる。
『ククク……追い詰められている。私は追い詰められている。だからこそ、燃える。逆境こそ望む。ふはははは!』
そう笑って、ベノムの周りには見たことがある結界が貼られていた。これは、また弱点を攻撃しないとダメなやつ……!
ここで使うんですか……!