愛すべき世界 ①
ベノムは何人でも、といった。だからレイドボスなのだろう。
今までのレイドボスはレイドボスと気づかないまま単騎で討伐していた。が、レイドボスだとわかってるのなら、対策しないわけがない。
レイドボスということなのだから、相当強い。
「まずオズ、ルシファー、ミカエル、クー・フーリン、アーサー、ランスロット、アリス、ベルゼブブ、ゴエモンは出撃決定かな」
戦力になりえるものは入れていこう。
だけどこれだけに人数、私だけでは指揮をとれない。一人一人見る時間がない。だから、チリンたちも一緒に……。私のギルドでも戦える人は連れていこう。
ヒーラーも私だけじゃ心もとない気がする。範囲回復はあるがあくまで範囲技であり、結構広い、というわけじゃない。
「王たちもなるべく……」
でもソゥ様にこんな危険な戦いを……!
マーヤにもやらせるわけにはいかないかもしれない。実際進化していない二人だと危険だ。ニル、マシュマロ、マグダッドは連れてくるにしてもだ。
「あとチリンとかギルドの人、ストレングス、他の王……」
結構な大人数で挑まなければならないだろう。
その点が心配だけれど……。大丈夫だ。大丈夫と信じたい。私は今オンラインになっているフレンドたちに呼びかける。
天界に集まれ、と。私はギルドに戻り、仲間を連れてくることにした。
天界に集まったのはうおざんまいのギルド、精霊の守護者のギルド、ぱわふるのギルド。
この三ギルドにNPC仲間を含んで倒す。結構な人数は集めたつもりだ。できるだけ多く集めて、百人は超えたかもしれない。多すぎないか?
ともあれ、天界にやってきた。
「準備は整ったようだな」
待ち構えていたベノムは、ゆっくりと立ち上がる。すると、周りの風景が荒野に代わっていた。
「天使が住まう天界を壊すわけにはいかぬ。場所を変えさせてもらった」
「なるほど。いい心がけじゃん?」
私がそういうと、ベノムは不敵に笑う。
静まり返る。そして、ベノムは。
「さぁ、来い。ミキが愛した人間の力を私に見せてみよ!」
戦闘が始まった。
ベノムはいきなり地面に手を突っ込む。そして、地面をえぐった。ちゃぶ台返しみたく抉れた地面は宙を舞い、私たちに向かって落ちてくる。
さすがにこれをまともに食らったらお陀仏しそうだ。みんなよけようとしている。が、人数が人数で真ん中に近い人が遅れている。
「小手調べだ。これで死ぬのはつまらぬぞ人間よ!」
私は逃げれるよう上昇気流で少し抑える。だけれど、少し浮くってだけで持ち上げられるほどの風力はない。が、逃げる時間を稼ぐのなら十分だろう。
「まずは近寄って攻撃してみたいが……!」
ロトがそういう。
ベノムのほうをみてみるとバリアみたいなものを張っていた。円形のものがベノムを包んでいる。あれを壊さない限り攻撃はできない……!
初手がこちらじゃなかったのが痛いな……!
「ベルゼブブ。いくぞ」
「ああ」
ルシファーとベルゼブブがバリアを壊そうとつっこんでいった。クーフーリンも槍を構えて突撃していく。
なんにでも貫ける槍はバリアを壊せるのか? 多分、無理だ。
「貫け! ゲイボルグ!」
「はあああああ!」
「ふんっ!」
ルシファーの剣が通らず、ベルゼブブの拳もクーフーリンの槍も通らない。傷すらついていないバリア。このバリアが厄介だ。
バリアを破る方法、それを見つけなければ話にならないな……。
バリアを破る方法を見つけなければ攻撃は通りません。