世界の真実を知りたい
天界から降りようとしたその矢先。
なにやら下界を見つめている男がいた。男は不敵に笑っている。
「ミキ。来たようだな」
「は?」
男はこちらに振り向いた。
不敵に笑い、こちらに近づいてくる。正直、不気味だ。こつ、こつと近づいてくる男から逃げるよう、一歩、二歩と後ずさりしていく。
「そんなに怖がらなくてもよい。私は話をするだけだ」
「は、話?」
「危害を加えるつもりはない。椅子に座って、ゆっくり話でもしようじゃないか」
と、男はベンチに向かい、座った。
私は間を開けて座る。さすがにここまで不気味だと近寄れないっていうか、単純に怖い。けれど、なにやら、この男は重要だと思う。この世界の物語を進めることにあたっては。
「自己紹介をしよう。私はベノム」
「み、ミキ」
男は、前を見据える。
「ミキはこの世界が好きか?」
「……好きだけど」
好きに決まっている。
ゲームの世界だろうが、この世界に愛着はある。楽しいし。魔物はちょっと私には物足りないけど、ローイたちやチリン、ソゥ様たちとプレイするというのも好きだ。
ゲームだからこそ、こんなに関われるんだと思う。だから好き。
「そうか。そういうものか」
男は遠くを見ていた。
「私も好きだ。人々が笑顔溢れている素敵な世界だと思う」
だけど、その瞬間、男はベンチを思い切り叩いていた。
ベンチが割れて、地面に尻餅をつく私。ベノムは立ち上がってこちらを見る。
「だがそれが気に食わない……! だからこそ、私はこの世界を破壊する。ミキ。私と一緒に世界を壊さないか?」
ベノムはそういって手を差し伸べてきた。
どういうことかわからない。この手を取るべきではない、そう思う。だがしかし、意図がわからない。この世界の真実と、なにか関係があるのか?
普通なら手をとるわけがない。けれど、私の中で何かが引っかかっている。それが、手を払うにも手を出すのもためらう理由でもあった。
「……わからない」
「そうか。まぁ、今でなくてもよい。答えを待つ」
男はそう言って去っていってしまう。
この世界を破壊するか否か……。その答えを出すのならば、この世界の真実を知るべきだと思う。どこで手に入れたかは忘れたが、世界の真実が載った巻物。それは本当に真実なのか……?
疑問が残ったままだった。
「……世界の真実を暴くしかないって言っても、暴くための証拠? がないもんなぁ」
どこかにほころびがあればそこから辿れるかもしれないのに。
……面倒くさい。ちょっと放置しておこう。この問題は。というか、答えた瞬間、ストーリーが進みそうな感じがする。
こいつ……あからさまに怪しいぞ……