精霊樹の元で
村内では他のプレイヤーも村人の頼みを聞いていた。
それだけでなく、村の外でモンスターを狩っても貢献度は増えるらしい。他のプレイヤーはだいたい狩りのほうにいっているから村人の頼みを聞く人はちょっとだけ少なくなっている。
まあ、おつかいより戦いたいからね。みんな血の気多いし……。
私はお願いを聞いていよう。
「……って、うん?」
私は困ってる人がいないか探しているとまた広場にたどり着く。
気が付かなかったけどこの木……。どこかで見たことがある。どこでだろうか……。というか、この木、近くにいるとめちゃくちゃ心地いいんだけど。
心なしか体力が回復してるような気がする。体力減ってないけど。
「うーん。この木……何の木?」
気になる木。名前も知らない木ですから~。
って、ここにいる場合じゃないっての!
「さて、行かないと……」
「珍しい。精霊様が木の前におる」
不意に声が聞こえた。
その方向を見るとおじいさんが鋏をもってこちらに近づいてきた。剪定するのだと思う。これは手伝うチャンスなんではなかろうか?
「拝んでおこうかの」
と、私の目の前でお祈りをし始めた。
すると、アナウンスが聞こえる。
《祝福してあげますか? はい/いいえ》
え? これ私拝まれてるの?
いや、まあ、はいを選ぶけど……。あ、なんか少しだけMP減ったような気がする。
「ありがたいありがたい。さて、精霊様。精霊樹を綺麗にします。葉っぱが落ちるかもしれませんのでお気をつけてくださいの」
「あ、て、手伝いますか?」
「いいんじゃよ。精霊様は見ていてくださいな」
手伝えないのか……。
貢献度は得られなさそうだ。かといってなんか離れていくと申し訳ないような気もする。終わるまでこの木の下で転寝でもしておこう。
ゲームの中で寝られるのかは疑問だけど……。
おやすみなさい。
目が覚めた。
精霊樹の枝が風で揺れている。とても神秘的な光景だ。鑑定してみるとおじいさんが言っていたように精霊樹と出てくる。なるほど。見たことあるって思ったのは一回見たことがあるからか。あの水路のとこにあったやつ。
「ふぁーあ……。あ、おじいさんがいなくなってる」
剪定も終わったのかな。さてと。じゃあ、私は此処から離れ……え?
目の前にはちょっとだけ不思議な光景があった。
「ええ!? なんで私こんなに拝まれてるの!?」
「精霊王様。起こしてしまいましたか……」
「いやいやいや!? 起きたのは起きたけど何この状況!?」
「先ほど私の祖父に精霊王の祝福をかけていただいたことにお礼を言いに来たのです」
「精霊王の祝福ぅ!? たしかにかけたけどこんな大勢で!?」
少なくともこの村の人口の三分の二くらいはいるんじゃないだろうか……。
「精霊王様の姿を一目でも見ようと集まってきたのです」
「あ、あぁそう…」
珍しいもの見たさでね……。NPCって本当に人間みたいだなあ……。
究極にリアルを突き詰めているからってここまでするかなあ。精霊王はまだましかもしれないけどね。トロフィさんはなんか恐れられそうだ。
「あ、そうだ。誰か困ってる人いませんか? 私手伝いますよ?」
そういうと我先にと言わんばかりに手が挙げられた。
みんな困ってるんだなあ……。