神が望むユートピア ④
兵士たちはオズたちに任せ、私とアルテナ様はオルテナ様に向き合う。
なんだか、オルテナ様は焦っている、というか、必死に抵抗している感じがすごい。
「お姉さま! こんなことやめてください!」
「やめません。私は怒りました。この世界は私が管理することにします。なのであなたは消えてくださいな」
「ひい!?」
アルテナ様怖い……。
だけれど、オルテナ様は恐怖を感じているのか目じりに涙を浮かべている。死にたくないから抵抗しているっていう感じがする。
……なにも殺すまでしなくてもいいんじゃないだろうか。そう思ってしまった。
「アルテナ様。オルテナ様を殺さなくても……」
「甘いのです。ここまで悪化させてしまった罰としてですよ。過激かもしれませんが、相応の罰です」
「ですが……」
私は口をつぐむ。
アルテナ様の目が本気だった。ギロリと普段とは違う鋭い眼光が私を睨む。それに怯えてしまい、私は何も言えずにいる。
だけど……やっぱり違う。殺すことはない!
「オルテナ様! 逃げて!」
「……ミキ様。いくらミキ様と言えど……!」
「アルテナ様。私は、殺すことは罰にならないと思ってるんで。殺すのはやはり反対です」
そういって、私はオルテナ様の腕を掴む。そして、飛行スキルを使用した。
「話せばきっとわかるはずなんです! 少し時間をください」
「……少しだけです」
場所を変えて、オルテナ様を座らせる。
「…………」
お互い無言だった。
先ほどのアルテナ様の怒り。それをもろに受けて、何か喋れるというわけでもなくて。
「……怖かった」
「うん」
「怖かった……。ぐすっ。私が何をしたっていうの……? 悪かったよぅ……。反省するよぅ……。でもなんでお姉さまは許してくれないの……」
「頭に血が上ってるから何を言っても今は無駄だろうなぁ……」
ガチギレしている今、話が通じるような相手ではない。
お互い頭を冷やすことが喧嘩においてもっとも大切。
「オルテナ様。なぜ怒っているのかはわかってますよね」
「私が、人間たちをこんな風にしたから……」
「はい。なぜこのようなことを?」
「……私は、自分の容姿でいじめられる人が嫌いでした。
みんなとは違う、みんなと一緒じゃない。そんなことでいじめをする人間が嫌でした」
……。
そう、だね。私も嫌だ。
「みんなと違っていじめられるのなら、みんな同じにすれば差別なんか生まれない。なんてことを考えて……」
「……そういう理屈か」
まぁ、わからなくもないけど、オルテナ様はいじめの本質を分かっちゃいない。
「オルテナ様。いくらそうしたところでいじめはなくなりません」
「……なぜです?」
「いじめというものはなにかにかこつけてやるんですよ。誰かと違うからでもいじめるし、俺と同じなのが気に食わない、ということでいじめる人もいるんです」
かつての私も気に食わないっていうだけだった。
はっきりいうと人間がいる限りこの世界からいじめなんてものはなくならない。人が人を苛めるのはいたって日常のことなのだ。
「オルテナ様は短慮すぎました。もっと考えるべきでしたね」
「…………」
「私からも謝りますから、一緒にアルテナ様に謝りましょうか」
「……うん」
涙ぐみながら、オルテナ様は頷いた。