神が望むユートピア ③
ミカエルとルシファーがこの世界にやってきた。
「ミカエル。ルシファー。手を貸してください」
「わ、わかりましたけど……なにするんすか?」
ミカエルは普段の口調を変えている。
どうやら真剣な雰囲気が伝わってきてるんだと思う。真剣なまなざしで射抜かれているような感じもする。ここまで真剣なアルテナ様を見たことがないのかルシファーも驚いていた。
「神を殺します」
「はぁ……。って、はあ!?」
「お、驚いた。アルテナ様。神を殺す……とは?」
「その名の通りです。この世界の神を殺します」
ミカエルとルシファーはさすがに驚いたらしい。
神を殺すというのは天使にとっては反逆を意味する行為なんだと思う。天使は神からうまれた。要するに生みの親を殺す……いや、生みの親はアルテナ様だし叔母を殺すって感じだろうか。
そりゃ驚く……。
「ミカエル、ルシファー。これは非常に苦しい戦いとなるでしょう。それでもいいという覚悟があるのなら私についてきてください。私は頼りにする前提でいますので」
「……ミキ様はいいのか?」
「私もいいよ。この世界を創った神はろくでもないからね」
「……なら私も参加する。正直、戦うのが好きな私でも神と戦うのは気が引けるからな……。それもアルテナ様の実の妹を手にかけるなんざ……」
「……神が言うのなら。従うのみです。私はアルテナ様と、ミキ様に従います」
「よかった。じゃあ、いこうか」
アルテナ様が瞬間移動を起こし、ステンドグラスが輝く教会の中にいた。
そこには兵士が傅いており、その先にはアルテナ様と似ている顔の少女がいる。あれがオルテナ……。この世界の創造神であり、この世界を壊している破壊神……。
「あら、アルテナ姉さま。どうかなさったので?」
「オルテナ。私は、貴方をずっと許し続けていました」
アルテナ様は目を閉ざす。
過去のことを思い出しているのかもしれない。
「貴方は私の妹だから、少しのことは黙認していました。ですが、この世界をここまで壊してしまったあなたはもう見過ごすことはできません。アルテナの名において処罰を下します」
「ここは私の世界なんだからどうしたっていいじゃん。アルテナ姉さまも自分の世界好きにしてるんでしょう?」
オルテナは笑う。
その笑みはどこか嘲嗤っているようだった。その狂気じみた笑みが私たちの体をこわばらせる。自分のオモチャで遊んでいるって言いたげの顔だ。
「私が創った私の世界。どうなろうが私の勝手。違う?」
「貴方は神というのがなにかわかっているのですか!」
「世界の管理者ってだけでしょ? 神って」
「管理している者として生物の尊重、幸福に暮らせることが本来神のあるべき姿。貴方はそれができていません」
「管理するだけ。その管理してるやつらがどうなっても知ったこっちゃないよ」
オルテナ様は自己中って感じの世界だ。
自分中心の世界を創り出した。人も生物もみな私だけのためにいるって感じだった。
「この世界は貴方だけのものではありません。人がいて、生物がいて。貴方だけの世界ではないのですよ」
「だからぁ! 私だけの世界だっつの! 人を作ったのも私! 生物も! 自分の世界を過ごしやすくしてるだけだっていうのに! 何がいけないの?!」
「生物としてのあるべき姿が失われているからです。オルテナ。人は人らしく過ごせる。心を持った者たちを壊して遊ぶ行為は褒められるものでありません。オルテナ。剣を抜きなさい。私たちは貴方と戦い、殺します。死にたくないのなら逃げずに私を殺しなさい」
「……は? お、お姉さま?」
「死にたくない、だとかそんなことは聞きません。あなたも、そうしてきたのですから」
アルテナ様は、早速魔法を放った。
教会の半分が消し飛ばされる。殺す気満々だ。
「くっ……! 兵士共! かかれ!」
そうして、戦闘は始まってしまった。