戦争の始まり
ストレングスさんが犯人……なわけないもんね。
わざわざ王に知られないようにしているのならストレングスさんは私に話すメリットは何もない。となると……。
戦争は偶然にも二つ起こる予定だった……? 片方は私がつぶした。けれど、もう片方はまだ残っている……?ストレングスさんが戦争が起きるって言っていたのはそっちのほうだということ。
となると、まだ終わっていない!
すると、一通のフレンドメッセージが届く。
『ミキ! 戦争が始まった! 助けに来てくれ!』
予想は、当たるものだ。
神域を経由していくと王城の前にプレイヤーの軍勢が攻め込んでいる。
プレイヤーとプレイヤー&NPCのぶつかり合い。どうやらまだ始まったときみたいだ。だがしかし、私が来た。
王都の住人は避難している最中。本来は避難誘導もした方がいいんだろうが……そんな暇はない。
私はプレイヤーのど真ん中に精霊魔法を放つ。
すると、プレイヤーがこちらに気づいていた。空中に飛んでいる私は弓矢で狙い撃ちにされていたりもする。それを躱しつつ魔法をぶち込んでいく。
「ミキにばれてんじゃねえかよ!」
「バレてねえと思って参加したんだぞ!? 無意味にデスペナ受けるだけじゃねえか!」
私が来ただけでどうやら士気が下がっている。
それは願ったりかなったりだ。無意味な戦争を起こさないでほしい。そりゃ王という立場につきたいのはわかる。わかるよ? だけど、こうして倒してやるっていうのはなんか後味悪いって言うのか……。
いや、私が言うとダメだな。
「死にたい奴は前に出て! 死にたくないなら今すぐ戦争から降りて」
そういうと、大半のプレイヤーが去っていった。
さすがに敵わないと思っているのだろうか。だけどプレイヤーの人数が減ったのはこちらにとって万々歳な結果であり、少し楽になった。
「ミキ一人ならなんとかなるだろ! 複数で抑え込め!」
と、言うプレイヤーもいる。
先ほど範囲攻撃でがっつり減らしたの忘れた? そしてさ、君たち。私以外にもチートいるからね? 鍛え上げた勇者たちが。
ほら、城門からお目見えだよ。
城門のほうを向くと勇者たちが各々の武器を手にしている。
イヅルはナイフ、ユウキは剣、男の子はロッド。
瞬間、プレイヤーの群れが弾けた。
ユウキによる一閃。その一閃で多くのプレイヤーがポリゴンと化して消えていく。何が起きているかわからないプレイヤーたち。
私でも苦戦したんだ。君たちにどうにかできると思っているの?
「な、なんだよ! 勇者……こんなに強かったか?」
「一年の時を経過してるとはいえこんななるかよ!」
プレイヤーの阿鼻叫喚が響き渡る。
一部のプレイヤーは剣を捉えることはできているけれど二撃目が受け止められずにダメージが入っている。さすがに一撃とはいかないまでもじり貧なのはプレイヤー。
ここは多分勇者が強くなかったから弱小とか呼ばれていた。だがしかし、ラノベでいう勇者召喚で召喚された勇者は基本的に強い。もしくは強い力を秘めている場合が多い。
このゲームもそのテンプレにのっかっているし、強くないのならわざわざ異界から呼ぶ理由がない。
舐めすぎだよ。勇者を。