熱を出した日 ②
雑炊も食べ終わり、鍋を片付けた。
「大丈夫? 体調はそれなりに回復したように見えるけど……」
「気絶したからそれがきつけになったんじゃないかな。ちょっと治った気がする」
気だるさはまだ残っているけれど大丈夫だと思う。
「ならよかった。あ、冷蔵庫にポカリあるよ。持ってこようか?」
「あ、うん。お願い」
「りょうかーい」
珠洲は立ち上がり、冷蔵庫を開けてポカリを取り出すと私に向かって投げて寄越した。
私は両手で受け取り、蓋を開ける。
「そういや、久しぶりに風邪だしたよな。美咲」
「ああ、ここ何年かは出してなかったね」
ここ数年は熱なんて出していなかった。
インフルエンザとかにもかからず元気に過ごしていた。ゲームのやりすぎで免疫力が低下したのかもしれない。やっぱりちょっとは控えるべきなのかな。
「最後は小学校六年の冬だったっけ」
「そうだよ。まあ、あの時はストレスがすごかったから免疫力も低下してたんだろうね」
「……もう大丈夫? 精神的に参って今回もひいたとかないよね?」
「ないない。最近は楽しいもん。珠洲とゲーム出来てね」
「美咲ぃ……!」
と、珠洲は涙を浮かべて抱きついてきた。
「なんで泣いてるの!?」
「だってぇ……! あの時は本当に心配したんだもん……! 私まで拒絶されてたしぃ……! 今の変化は私にとってうれしいんだよぉ……!」
「だからって泣くことないでしょ! もう高校生なんだから私も大人になるって」
いつまでも子供のままじゃいられないよ。
過去のことはもう決着をつけた。踏ん切りをつけた。もう、大丈夫だよ。私は楽しく過ごせてるしみんな信用出来てるさ。
「それにあの時のことは他の学校でもよくあったことだよ。たまたま私が標的になっただけ」
「たしかにニュースでは見るけどぉ……。ぐすっ」
「もういいって。珠洲。泣き止んでさ」
ティッシュを渡した。
珠洲が帰っていくと同時にお父さんが帰ってくる。
「ただいまー。ってまだパジャマ姿なのか」
「おかえりー。お父さん」
「誰もいないからってたるみすぎだぞー。しっかりし……って冷えピタ? 熱出したのか?」
「うん。もう引いたけど出した」
「……なら安静に寝てなさい」
「はーい」
私は起き上がろうとすると、背中にまた激痛が走る。
背中を抑えると、お父さんが駆け寄ってきてくれた。
「どうした?」
「いや、今日階段からおっこっちゃって……背中をうったんだよね」
「…お父さんが部屋まで運んでいってやる」
「ありがと。お父さん」
お父さんに負ぶられるように、私は運ばれていった。
小さいころ、よくおんぶしてもらっていたっけな。久しぶりにお父さんにおんぶしてもらえた気がする。懐かしいなあ。
「……その、なんだ。美咲は他の人と比べて成長が悪いな。母さんは…」
…………。
「お父さん?」
「……すまん。なんでもない」
貧乳は気にしてないよ? ただ、お父さん。それ普通にセクハラ。私じゃないと許してないよ。特に妹なんかは。
というわけで、ボス戦だと思った? 残念でしたの回でした。