【クリスマスss】 ミキちゃんのクリスマス
どうしてもいれたかったんです。クリスマスだし……
赤い服に赤いスカートをはいている。
随分と丈が短いスカート。いわゆるミニスカというものだった。あかい帽子もかぶって今の私は……。そう、サンタ! ミニスカサンタコスチューム。
冬にこの格好は寒い。けど真野ちゃんに見せるためなら……。
外は雪が降っていた。珍しく。
ホワイトクリスマス……というんだろう。辺り一面が銀世界。電車も止まって交通網に遅れが出ているらしくお父さんも帰ってこれないって嘆いていた。
今の私はバイトをしている。地衣に頼まれて。
「やっぱり私が着るよりミキちゃんのほうが似合うと思ったんだよ。寒いでしょ? これ店長から」
と、ココアを渡される。
マグカップに口をつけ、ココアを啜る。
「あつっ」
ふー、ふーと息を吹きかけた。
「ごめんね。美咲。手伝わせちゃって」
「いやいや。突っ立って看板持ってるだけだしラクチンだからいいよ」
私の仕事はサンタのコスプレして店の前に立つだけ。
ケーキ屋で何するかと思ったらこれだった。地衣は広場で呼び込みにしているらしく私は店の前担当。地衣もサンタ……衣装じゃなくトナカイのコスチュームだ。トナカイの角のカチューシャに茶色い服に茶色いスカート。赤い鼻。赤鼻のトナカイ……。
真っ赤なお鼻の、トナカイさんは~……。って感じの歌だよね?
「それにしてもカップル多いね」
「クリスマスだからね」
恋人つなぎで広場のイルミネーションを眺める恋人たちや夫婦。
羨ましくはないけれど……。ちょっと不公平だと思うの。
「あとで真野ちゃんもくるんでしょ? 色紙もってきたの」
「くる……って言ってたけどどうだろ。この天気だし」
「あー……」
地衣は空を眺める。
夜空の星が見えない。ただ、雪が深々と降り続ける。白い雪は地面に落ち積もっていく。こんなつもるのは久しぶりだなぁ。なんて思いつつ、ココアを飲み干した。
「さて、呼び込み戻りますか! 美咲、頑張ってね!」
「うん」
私は看板を手に持ち、道行く通行人を眺めていた。
地衣はメガホンをもって広場のほうに向かう。クリスマスっていつもと変わらないなぁ。ああ、早く帰ってA2Oしたい。
「おーい美咲ー。きたよ」
「あ、珠洲」
珠洲がセーター着て私に近寄ってくる。
あったかそうじゃん。
「寒くないの?」
「ばりばり寒いっての」
「そう。あ、ケーキ買いに来たんだよ。美咲がバイトしてるから」
「そうってあんたね……。ケーキか。あとで払うから美鈴にもってってやって。美鈴はモンブランね」
「了解。って言っても美咲から渡したほうがいいとは思うけど……。シスコンだし」
シスコンだから私から渡したほうが喜ぶだろうけど。
でも帰れる時間が九時過ぎになるとかいっていたし夜食べたら太るからね。
「さて、帰ってレベリング~」
珠洲は陽気に帰っていく。
そして、珠洲と入れ替わるかのように目的の人がやってきた。
「真野ちゃん! と真綾!」
「こんちは~。いや、こんばんはか」
「さぶい……」
二人はコートを羽織っている。
真綾はマフラーを巻いていて手袋もつけている。真野ちゃんはただコートを羽織ってるだけだった。寒くないんだろうか。
「寒くないんですか?」
「いや、こっちのセリフだけど……。ミニスカのほうがよっぽど寒いと思うよ」
「タイツはいてるんで大丈夫かと」
嘘。結構寒い。
だけど真野ちゃんに心配をかけるわけにはいかないのであったかいと暗示をかけておく。ちょっとあったかくなったような気がした。
「これ、クリスマスプレゼント。私とおそろの指輪~♪」
……告白っ!
指輪を受け取る。開けてみるとダイヤモンドが少し使われているのか輝いている。いい……! すごくいい! 嬉しい! 超嬉しい! 来年も頑張れるよおおおおおお!!
テンションマックスですけど!? 今宵の美咲ちゃんは一味違うぜ!
「私からこれ。マフラー」
「ありがとう真綾!」
指輪をつけ、マフラーを首に巻く。
むふふ、幸せ。ありがとうキリスト様。生まれてきてくれて……。今日ほどクリスマスに感謝したことはないね。
「それじゃ私ケーキ買って美咲ちゃんの家に行くね」
「へ?」
「今日電車とまって帰れなくて。美咲ちゃんの家に泊めてほしいんだって美鈴ちゃんにお願いしたんだ」
「…………」
「あ、あれ? 美咲ちゃん?」
「……し、死んでる」
「美咲ちゃーーーーーーん!?」
泊まる……。真野ちゃんが家に……。
ありがとう。本当にありがとう。今の私は神に土下座してお礼を言いたい気分だ。幸せ。なんて幸せなんだろう……。
ありがとう……。ありがとう。ありがとう!