おるすばん ①
どうやら掲示板でも王を殺せば王になれるという書き込みがあった。
で、軽い気持ちで挑戦するけれど王が滅茶苦茶強くて無理だっていう話があった。他国の王は何やらチートな技を使うらしい。触れたら即死とか……。運営もそう簡単に取らせる気はないようで。
だがしかし。アドバンスだけは比較的攻略が簡単だという話が出ている。なにせ瀕死まで追いやることができた。勇者が邪魔だったが……ロト氏ねというとばっちりまであった。
勇者を完封できれば王になるのは容易だということだ。
だからアドバンス王国で戦争が……。
あれだ。多分勇者を育てればまだ苦戦していたはずなんだ。私たちプレイヤーが勇者を育てなかったから勇者はチートになりえなかった。
勇者を無理やりにでもチートにすればよかったんだと思う。そういうクエストも多分あるはずなんだよね。
「というわけでアルテナ様。勇者を強くしてくれることは可能ですか?」
「可能ですね。ミキ様」
「……様?」
ミキ様? ミキさんとか言われてたけど?
「知らないのですか? 主神となったことにより私より格上の存在になったのですよ?」
まじですか!?
「話は聞いています。あなた方の同胞が戦争を起こそうとしているのでしょう。地上に降りて勇者を鍛え上げてきます。……が、ここを不在にするわけにもいかないのでミキ様。失礼ですが終わるまでここに残っていてくださいませ」
《クエスト:おるすばん を受けますか?》
おるすばん……。
おるすばんなら簡単でしょう。多分。知らないけど。
「わかりました。ではお願いしますね」
「かしこまりました。比類なき強さにして差し上げます」
「…………」
いいのかな?
ここはアルテナ様の神域。
私は外の世界の様子をモニターで眺めている。チリン達もこれで観察できるのがいいよね。チリンは何してるんだろうっと。
『ふふ、ふふふ。ミキを驚かせるためのものでーきた! 帰ってきたミキにこれで脅かして泣いてもらおう!』
……そんなことを考えているのか。
私はチリンにフレンドコールを送る。
『はいなに?』
「私を脅かすって何?」
『ふぇ!? な、なんでばれてるの!?』
チリンは辺りをきょろきょろと見渡す。
誰もいないことで恐怖が増したのだろう。ふふ、なかなかここの空間いいねっ!
『ミキ! どこで見てるのっ! ミキーーーー!!』
「もしそれで脅かして来たら今度おばさんに告げ口してあげるから」
『しないから! しないから許して! どこにいるのミキーーーーー!』
フレンドコールを切る。
ここで全プレイヤーの監視ができるのだけれど名前を入力しないと見れないので知ってる人だけにしておく。
……プギー何してるんだろ。
『妖精のダンスでーす! どうですかミキさん』
切った。
え? なんで見てるのわかってるの? なんでミキさんあなた見えてるの?
再びプギーにしてみる。
『おっかしいなぁ。ミキに見られてる感じがしたけど……。ん、なんか今も』
変える。
なに? あの子なんか感じ取るの? 怖いよ。プギーだけは見ないでおこう。なんだかあの子エスパーだろ。ある意味ミソギより怖い。
さて、どんどんフレンドの様子見てこっと。
プギー「あ、なんか変な気配なくなった」
ミソギと言いプギーといいなんかおかしい人ばかりですね王って。