クエストの報酬 ①
ゴエモンに手を引かれてきたのはでかい和風の平屋建て。
ゴエモンが引き戸を開けると、中は普通の生活空間になっている。囲炉裏があって、畳があって。いかにも昔の人が住んでいる感じの部屋だった。
これって住居不法侵入?
すると、とてとてと二人駆け寄ってくる人がいた。
「ゴエモンさん。帰ってきたんですね」
「ああ」
ゴエモンは近寄ってきた二人の子供の頭を撫でる。
いや、成長したなぁ……。ハクビとメアリだろうけど……。やっぱり白い髪はいつ見ても綺麗だ。
「そちらのお客さんは?」
「わからねえか? ミキだぜ」
「ミキさん! お久しぶりです!」
「お久しぶり」
ハクビは一年の間でものすごく成長している。
私より低身長だったのが私の身長と並んでいるし……。成長期こんな伸びるの? メアリも少し身長も伸びておっぱいも少し膨らんでいる……。
…………。
べ、別に女児に嫉妬しているわけじゃない。これっぽっちも嫉妬なんてしてないもんね!
……はぁ。
「ちーっす。ゴエモンさーん。また今日もきたよー! って、いつかの」
と、黒髪の女の子が身軽な服装で訪ねてきている。
この子、もしかしてあの時の勇者の一人なんじゃないだろうか。
「おやおや。いつかの神様」
「ってことはあの勇者で決定か……」
やっぱり勇者だったか。
「うん。あ、いえ。はい」
「口調はそのままでいいよ」
「そう? よかったぁ。改めて自己紹介するね。私は式神 出流。イヅルでいいよ」
「ミキ。よろしくね」
この人って確かショタコンの勇者だよね?
「それで何しに来てるの?」
「なにって盗賊の極意教わりに来てるの」
なるほど。
たしか盗賊という職に就きたいっていう勇者がいるっていう話だったけれどこの子だったか。胸も貧相だしなんだかシンパシーを感じる。
胸なし同盟でも作りたいくらいだ。
「イヅル。私は今日疲れたから明日にしてくれ」
「わかりましたー。ではまた明日改めて!」
と去っていく。
ゴエモンって何気に人望あるよな。勇者の伝手もあり、コマチがいて……。私とも結構親密だと思うし。
世話焼きだからねゴエモンって。
「さて、手伝ってくれた礼を渡さにゃならねえんだが。神に献上するのはなにがいいのかわからねえし下の宝物庫から何か一つ持ってってもらって構わねえぜ」
といって畳を開けると石造りの階段が現れる。
ゴエモンはそこを下りていくので私もついていくと、下には財宝が無造作に積まれている。これ全部盗み出した品なんだろうか。
「この中から一つ?」
「ああ。なんでもいいぜ」
というので私は財宝に近寄る。
一つを手に取ってみると重さがあり、輝きもある。黄金やらなんだか書物やら。多分この中に凄まじいものがあるんじゃないかとは思うが……。
とりあえず漁るか。なんでもいいっていうし。
「なら遠慮なく漁るよ?」
「おう。一つや二つ盗られたところで何の問題もねえからな」
「男らしい……。というかこの宝の使い道は?」
「換金して孤児院に寄付するだけだぜ?」
「わぉ」
いい人。
お金を得る工程は褒められている者ではないと思うが、お金を私欲で使わないのはいいと思う。ゴエモンってなんだか憎めないよね。盗賊というより義賊……。ネズミ小僧とかそんな類。
「この無造作に積まれている下のほうに凄まじいお宝が眠ってると見た」
「掘り起こすか? 手伝うぜ」
「頼むよ」
宝を避けていく。
そして、下のほう。そこに、一個の古い書物があったのだった。