アプデが明けた
アプデが明けて初ログイン。
するといきなり飛び込んできたのは変わった街の光景。建物が増えている。始まりの街がもはや始まりの都市っていう感じがしなくもない。
「ほほう」
一年が経過した設定になっているからこういうもんか。
大型アップデートは三日続いたから三日のうちにこんな進歩しているというわけか。となると、街の探索をしなくちゃいけないな。
「変わってる! 見てみろよ! すげえぞ!」
「兄さん落ち着いて」
ジャンヌ兄弟がログインしたようだ。
そして、次々にログインしてくる。エルルゥ、みるきー、ルルークも変わった街に驚いていた。三日でこんなふうに変わるんだと感嘆の息を漏らしている。
「こりゃ探索だねー。ペットも欲しいし…。ねえ、ミキちゃん。ペット、ギルドにおいていい?」
「構いませんよ! ええ!」
「ありがと! ふふーっ。なに買おうかなぁー」
ソゥ様はペットを飼いたいらしい。
ペットを買って飼う……。ややこしいぞおい。
「ミキちゃんはペット買うの?」
「はい。リスを買おうかなと」
「リスか……。あ、あのさ。お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「ハムスターにしてもらっても、いい……?」
「わかりました!」
「ええ!? ミキ、リスから乗り換えるの早い!?」
だって真野ちゃんの頼みだからね!
ペットは一人一匹までって決まっている。ハムスターは四体で一体という扱いになるらしいけど。まぁハムちゃんだからね。ハム太郎って名前に……。いや、ダメだな……。
「私猫飼いたいから……。いい?」
「いいですよ!」
「よかったぁ……」
真野ちゃんが抱きついてくる。
ちょ、あ、やばい。早速ログアウトしそうかも……。
「……ソゥ。ミキがログアウトしちゃうよ」
「ご、ごめん。さ、最近ちょっとスキンシップが過剰になってるね」
「ウェルカムです!」
真野ちゃんなら大好きなんで!
「ソゥって猫好きなの?」
「好きだけど現実で触れないから」
「なんで?」
チリン。わからないの?
「真野ちゃんは猫アレルギーなんだよ? 現実で触れるわけないじゃん。バカなの? 死ぬの?」
「ミキがいつも以上に辛辣……。さすが過激派……」
これだから真野ちゃんをただ可愛いって言ってるだけの奴は……。真野ちゃんが可愛いのは当たり前だし可愛いって口に出す私可愛いアピールはいいんだよ。
真の真野ちゃんファンなら可愛いなんて口には出さない。だって可愛いなんてわかっているから。
「ワンちゃんなら飼ってるんだけどね」
「たしか名前はきゅーちゃんですよね?」
「そこまで知られてるんだ……」
「この前テレビで言ってましたから」
「……問題です。私が次主演するドラマは?」
「”ある日のある夏のありきたりでありよりのありな愛”」
「正解!」
わーぱちぱちと拍手を送ってくる。
タイトルがどうかと思うがれっきとした恋愛ドラマらしい。ちょっとSFチックな恋愛ドラマ。胸キュンは確実。そう、コーラを飲んだら(以下略)
「タイトルでゲジュタルト崩壊しそう……」
「マーヤも思うでしょ? 私も思ったよ」
「チリン早口でさんはいっ」
「え!? ある日のあるなちゅっ」
やっぱり噛んだ。
「略称はありな愛だからそっちで呼ぶと楽だよ」
「舌いひゃい……」
チリンが痛みに悶えている。
ま、ここで話していても仕方ないしそろそろ向かうか。
「さて、ペットショップに向かいましょう!」
ある日のある夏のありきたりでありよりのありな愛
ラノベみたいな長いタイトルだな。流行らないぞイマドキ。