予兆
妖精の国の探索は進んでいない。
最近ギルドに誰もいなくなることが多くて、私がギルドに残ることが増えてきている。なんかみんなクエストやら装備強化やらで動き回っている。活発なギルドですね。
「ということでガブリエル。受付お願いね」
「かしこまりましたぁ!」
ガブリエルを呼んで受付をさせることにした。
その間、私はローイのところに向かう。実はというと理想郷でも素材が手に入ることが分かったのでカナアン、ジパングにいって素材を取ってきた。
あと、カティのところにも後で行かなくちゃ。
「ローイ、いる?」
「おう。いるぜ」
「頼まれてた素材。納品しに来たよ」
「さんきゅな。これ、見本だぜ」
とだしてくるのは一本の剣。
名前は”双剣スクラム”レア度は8でクオリティは8+。さすがのクオリティだ。ローイ自体トップクラスの鍛冶師だからこのクオリティなのかもしれない。
「そうだ。ミキに報告がある」
「なに?」
「裁縫スキルとったやつ雇ったぞ」
「まじで? 助かる」
「まぁ、そんな数はいねえし、レベルもまだまだなんだが依頼してくれると助かるな。経験値を稼がせたい」
「わかった。糸とかだよね? まぁ、いらないものは全部保管庫に保存してあるしそこから好きなだけ持ってっていいよ。私のは誰でもとれるよう解放しているから」
誰でもいれれてだれでもとれるように。ただ、レア度の高い奴は私が個人で管理しているけど普通のドロップで手に入るやつはすべて保管庫に入れてある。
だって手持ちで収まりきらないんだもん。まぁ最近保管庫にいれてないような気もするけど。
……だって最近イベントボス的なやつばっかりだし。
「チリン達も適当に入れてくれてるし素材には困らないはずだよ」
「わかった。それで練習させる」
それにしても裁縫かぁ。
うちのギルドにも裁縫スキル持ってる人いなかったからラッキーって感じかな。サンは鍛冶師だけど最近はユキショウグンとレベリングにいってるしね。
ソゥ様は今日撮影だっていうことでログインしてないし……。マーヤも写真撮影があるとか。
最近ギルド全員で揃うことがまずないですね。
「そういや、噂聞いてるのか? ミキは」
「え、なに唐突に。噂?」
「知らねえの? 最近運営の動きが怪しいらしいぜ」
「……いや、知らない」
いや、運営が嫌がっているのはわかるけど……。
「大型アップデートがあるんじゃないかっていう噂だ。まだお知らせはないがな」
「アプデ?」
「ペットシステム、王の追加、所持金が必要となるなにか……。それがあるっていわれていてな。ほら、最近ギルドの奴ら出かけてるだろ? 多分それが原因だぞ」
「ふぅん……」
「ミキは集めないのか?」
「すでに一千万くらいあるからいいかなって」
そう。あのアーサー王のやつの賞金は使っていない。
ろくに欲しいものがないからなんだけど。
「そうか。俺もそろそろ金策しようと思ってるんだが、いいか?」
「取引するギルドを増やすの? いいよ」
「おう。さんきゅ」
ローイは、笑った。
そして、その日の夜、運営が大型アップデートの発表をした。