ギルド戦、やってくれますよね?
案内されたギルドに入る。
「ようこそ。パワフルへ! 依頼ですか? 入団ですか?」
と、いう。
入団か。試験とかあるのかもしれないな。とりあえず入団って聞いてみる。
「入団って試験ありますか?」
「ええ! ありますとも! 上位ギルドなのでそれなりにはふるい落とします!」
あ、そう。
まぁいいけどさ。入る気ないし。逆に潰しに来たし。
それにしても少し変装するだけで気づかれないものなんだなー。頭にかぶりものして、衣装を変えただけで私とは気づかれない。鑑定していないのだろうか。
鑑定していたら結構驚くはずだもんね。
「えっと、この子たちからギルドホームを取り上げたとか聞いたんですけど」
「……いえいえ。取り上げただなんて。うちで使うほうが有用だと思っただけです」
「ふぅん。じゃあ私が使うほうが有用かもしれないね」
「……ここがどこかわかっていってます? 上位にランクインしているギルドですよ? 人々が言うには精霊の守護者を凌ぐほどだとか!」
……挑発?
まぁ、いいけどさ。凌ぐっていうほどだから相当上手いんだろうなぁ……。どういうことができるんだろう。もちろん攻撃当たらないことは余裕だと思うし……。
「へぇ。じゃあ勝負してみたら? 精霊の守護者と。快く受けてくれるかもしれないよ?」
「それは名案なのですが温厚な方と噂される方を怒らせるような真似はしたくないのです。関係を保つにはそうしないといけないんですね」
「いやいや。その程度で崩れるなら最初からそこまでのものなんだよ。勝てる自信があるならできるよね? 勝てばいいんだし!」
「ですが……」
「ギルド長のミキさんならきっと受けてくれますって。力の差を見せつけてやりましょう!」
今こそ立ち上がるのだ! 咆えろパワフル!
「……か、考えておきますね」
「……絶対行かないやつだそれ」
行けたら行くとか、考えておくとかやんわりと嫌だって言っているようなものだからね。
そんな常套句に騙されたりはしない。私は依頼なんだから、承諾してもらわないと困る。だからなんとしてでも受けさせよう。
動画もさっきから撮っている。言ってないなんてことは言わせないように。
「でも精霊の守護者に勝てるほどの力があるなら大丈夫じゃないですか? 見たところ人数は多いですし多勢に無勢ですよ! 数のごり押しで行けます!」
「ですが……」
「それに、やるなら今ですよ? 思い立ったが吉日です!」
「……いけるのか?」
「ええ!」
乗った。
よし。
「……わかった。じゃあギルド戦を申請するか!」
「その意気です! あ、言い忘れてましたけど、私の名前、ミキですから。ギルド戦待ってますね」
その時、場が凍った。
だけれど言ってしまった手前、もう消すことはさせない。今更辞めますなんて面目も立たないでしょう? 私はさ、こういう悔しかったら奪い返せみたいな考え方って嫌いなんだよね。
「ギルド戦、受けますよね? 受けるって言ったんですから。私たちより強いって豪語したんですから。お願いしますね?」
私は笑ってギルドを出た。