黄泉返り
そびえたつ巨大な岩……。
後ろには山があり、岩の横に出入り口があった。そこから常世に行けるんだろうけど……。くっ。お、お腹が痛い。
「お腹が痛いんでちょっと……」
というと、ミソギが肩をガシっと掴む。
「行くわよ」
「助けてえええええ!」
無理やり中に連れられて行った。
中は薄暗い。岩の中に入っているはずなのに、なんだか妙な浮遊感があった。なんだか足場がふらふらしているような感じ。薄暗くて見えづらい。
すると、目の前に青い人魂が……
「ひぎゃああああ!?」
「落ち着け。熱くないし攻撃されていることはない」
「幽霊コワイ……」
「人魂ですらダメなのか……」
無理です。生理的に無理です。ごめんなさい。
『よく来たな、生ける者』
と、祖父さんのような声がする。
すると、明るくなった。いや、街灯がついた……ような感じ。地面があって人魂が照らしているかのような……。そんな感じだった。
声の主は目の前にいた。
「ここは常世。死者が集う国。いらっしゃいませ五名のお方」
「……ふぅん」
「生ける者が侵入したのは貴方方が初めてですじゃ。こういう時は何か渡したほうがええんかのう」
と、その時にアナウンスが響いた。
《常世の祝福を得ました》
《スキル:黄泉返り を取得しました》
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黄泉返り:デスペナルティの廃止(常時発動)(MP消費なし)
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……なかなか有用なスキルを手渡された。
「デスペナルティが廃止……。何回でも死ねるということだな」
「まぁ、使えるね。死んでもステータスが下がらないのは嬉しいかな」
うおざんまいの人たちも喜んでいる。
「ほっほっほ。喜んでくれたかのぅ。それでは常世を探索してみるがよい。あ、あちらの坂は昇るでないぞ。上ったら最後、戻るのが困難だ」
といって消えていった。
見たところ幽霊はいなさそうだ。人魂はまだ怖いけど……。でもここを探索しろっていうことだよね。あの坂は多分……。
上るな、ということなのだからのぼらないほうがいいんだろうけど……。
「あの坂…上ってみるか」
「やっぱり気になるよね」
「え゛っ」
ダメって言われたらやりたくなる現象だよね……。
でもさ、わざわざ忠告されたのに上るって意味が分からないんだけど……。あの言葉を信じてのぼらないべきなんじゃないだろうか。
「私は反対……」
「いいって。ミキさんなら何とかなると思うよ」
「実際いままでそうしてきたんだろうしな」
私への信頼が超厚い……。
でもさ、でもさ……。なんとかなるにしてもわざわざ面倒ごとを起こす必要性って皆無じゃない? いや、行きたい気持ちはわかるけど……!
「わ、私は行かない……!」
拒否をする。が、ミソギに肩を掴まれる。
「死なばもろともよ……。虎穴に入らずんば虎子を得ずだわ」
…………。
私は抵抗をやめた。ミソギすごい引っ張るんだもん。これ私が行かないといってしまうし、行かなかったらいかなかったで「つまんなっ」とか罵られる……。ソースは私。
仕方がないので行くことにした。
見たところ普通の坂。心臓破りの坂といわれるほど傾斜もない緩やかな坂。常世にある坂って一つしかないと思う。
……あ。上ってる最中なんだけどなんかすでに嫌な予感の気配がする。というか、なんか想像ついてしまった…。
そして、ついに坂を上り切ってしまった。すると、背後から、声が聞こえてくる。
『ダメじゃといったのに……。襲ってくるぞ』
すると、私たちの背後には、鬼がいた。