親愛なる偽物へ、本物より ③
蜘蛛との戦闘が終わり、今度はドッペルのほうを見ていた。
「やっぱりそう簡単には当たってもらえないか」
マグダッドはナイフを投げるが当たらない。
追尾式のナイフをぽいぽい投げているが、石を当てられてはじき返されている。ふむ、想像以上に厄介だ。
『ワタシハ……ツヨイ!』
「喋った?」
こいつ喋るのかよ。
『ツヨイツヨイツヨイツヨイ……ツヨイ!』
そういうと大きく飛び上がってマグダッドに抱きついた。
そして、拳で殴ろうとしている。私はランスロットに指示出して殴りに行けと命令を出す。
「ニタイイチトハヒキョウダゾ!」
「知らないね! ミキの能力をコピーしてる方が卑怯だと思うけど?」
ぐう正論。
私の能力は正直卑怯だ。
他人の力を借りて強いと勘違いするのもまずおかしい。自分の力だと過信している。たしかにコピーしたのは自分の技術だけれど強いのはコピーした本体だ。偽物が本物に勝てるわけないでしょ。あのドラマも結局本物が勝ったしね。
「さて、君は終わりだよ偽物。俺は君を殺すことをためらわないよ」
『コ、コノ……』
「素直に負けを認めたら? スキルは全部使用不可能だからさぁ」
『グッ……』
「飛行スキルは使えるかもしれないけど、使ったところでどうっていう話だから。諦めたほうが楽だよ」
『コ、コノクソガアアアアア!』
そして、偽物は、マグダッドが投げたナイフを首に受けて倒された。
ふぅ。厄介だった。以後気を付けよう。ドッペルゲンガーとはなかなか会いたくない。この方法を取らざるを得ないし、グィネヴィアがランスロットが殺されて生き返ることを知って耐性がついても困るからさ。
「ルシファー、ガブリエルを呼んできて。ミカエルはご苦労様」
「ああ。わかった! 帰るな!」
「畏まりました」
封印を解かなくちゃあなぁ。
「天界の小説家、ガブリエルですっ。また封印を解くということで執筆してきましたぁ!」
ガブリエルが降りてきた。
本を受け取り封印を解く。それにしてもドッペルゲンガーのせいでこうなったんだ。いや、私の油断のせいか……。
「話はルシファーさんから聞きましたよ! 神の模倣をした愚か者……いい本が書けそうです! ネタ提供ありがとうございます!」
「あ、ああ、うん」
これも確かに面白そうではあるけど……。
純文学にありそうだ。”神になりたかった偽物”とかそういう題名でだしたらいいのに。
「ほかにネタはいるか?」
「いえ、これだけでも本一冊は書けそうですよ! ルシファーさん! ありがとうございます!」
「そうか。我が神の伝記、広めるがいい」
「了解です! 天界の小説家として当然ですね!」
ルシファー……。嬉々として広めているのか。
いや、たしかに嬉しそうだけど……。
「題名は……そうですねぇ……。親愛なる偽物へっていうタイトルでは?」
「インパクトが足らんな。もっとこうドカンとくるものがないのか」
「そうですねぇ。偽物っていうシンプルなタイトルでは?」
「うむ。しっくりくる。それでいこうか」
「はい! ミキ様がいるとネタに困りませんね!」
そりゃどうも……。