親愛なる偽物へ、本物より ②
またあの大蜘蛛と戦うことになるとはなぁ。
ミカエルとルシファーがいるから戦闘には何の問題もないけれど回復できるグィネヴィアはショックで気絶しているし……。早いところ目を覚ましてほしい。
「マグダッド。頼むよ。汚れ役任せてごめんね」
「気にしない。俺はこういうの慣れっこだし好きな子のためなら構わないよ」
なにこのイケメン……。
「ルシファー! ミカエル! やっておしまい!」
「かしこまりました」
「喧嘩だぜええええ!」
戦闘力は問題ない面子だ。
マグダッドならきっと私に攻撃を当てることができると思う。だから、マグダッドを選んだ。パーティー制限でこれ以上無理だったけど……。いや、あと一人は連れてこれたけどチリンが突然無理になったからなぁ。チリンのお母さんが大激怒したらしいからさ。まぁ、チリンの自業自得なんだけど……。
「この戦闘終わったらガブリエル呼んでもらわないと……。天使召喚もできないし」
封印を解除しなくちゃならない。
あのドッペルゲンガーにいったことはすべて私に跳ね返ってくるんだよ……。
「はぁっ!」
ルシファーが大蜘蛛の体を剣で斬りつける。ミカエルは剣を捨て素手で殴っていた。ミカエル豪快っ。超豪快すぎる! 男顔負けだなぁ。
武術も行けるのか……。
「今日の気分は素手だ! オラオラァ! 蜘蛛だからって調子乗ってんじゃねえぞ!」
完全にヤンキーだよなぁ。
素行不良の天使じゃないか。これで兵士長(だっけ?)とか信じられないんだよなぁ。兵士たちもなんか素行が悪そうだ。
「あ、卵産みやがったぜ!」
「ミカエル。分体はお前が相手しろ」
「わかった! 数が多いがその分楽しいよな? 楽しませてくれよ!」
ミカエルは笑いながら生まれた蜘蛛の子供をぶん殴り倒しまくっていた。その笑顔はもう、天使には見えなかった。狂気的な殺人鬼の顔だよ……。わかるかい? これで天使なんだよ……?
ミカエルの戦闘狂っぷりは凄まじいな。もはや尊敬の念すら感じてくるわ。
「蜘蛛が我に逆らうなぞもっての外だが……神を恐れぬその勇敢さは目を見張るものがある。が、手を出してしまったのだから死ぬ覚悟はできているな?」
『シヌ……? ワタシハシナヌ! カミガイルカラセカイハオワラヌノダ! シヌノハテンシ! オマエダァァァァァ!』
「やれやれだ。そっちがその気ならば我も本気を見せてやろう。なに、苦しいのは一瞬だ。病むことはないさ」
と、ルシファーは魔力を集めていた。
そして、黒く染まった翼が大きくなっていく。それは、人が何人か包み込めるような大きなサイズになっている。目の前の大蜘蛛よりも大きい。翼が大きくなっている……?
目も赤く染まっていた。
「この状態になるのはちょいと骨が折れるが、最高級の罰を与えてやらぬとな。楽に地獄に行けるとは思うな。絶望が好きならば貴様の絶望を捕食するがよい」
『ナニヲ……!』
「この世界に、光あれ!」
それは一瞬だった。
翼が蜘蛛を包み込む。あたりが暗くなり、ルシファーの翼が光っていた。雷でも落ちているかのように轟音が響き渡る。
何回も何回も。轟音が響き渡る。叫び声はかき消されているのか、それともあげる暇がなく死んでしまったのか……。聞こえなかった。
そして、ルシファーは元の状態に戻った。
「やれやれ。この状態はあまり長続きしないからな。しばらくはこれも使えないだろう」
「ルシファー……」
「だが、倒した。神よ、罰を下しましたのであの者を許してあげてくださいませ」
「……許すも何も」
私が呼んだんだから……。
蜘蛛との決着がつきましたね。
はい。次はドッペルさんです。