美鈴を追おう!
最近妹の美鈴が頻繁に外出をしている。
彼氏でもできたんだろうか。いやいや。お姉ちゃん一筋の美鈴に私以外を優先するなんてない……と思うんだけど。でも、本当に彼氏だとしたら……。
うーん。美鈴が選ぶ彼氏て想像できないんだよなぁ。
ついてってみるか。
私は物陰に隠れて美鈴を見張る。
美鈴は誰かと待ち合わせをしているようできょろきょろと周りをうかがっている。そして、待ち人が来たのか手を振っておーいと叫んでいる。
相手は……男の子だ。
何かを話しているけれど聞こえない。もうちょい近くで観察したいけどこれ以上近づいたらバレそうな予感がする。
遠巻きに見守るだけでいいか。
あ、バスに乗った。
バスに乗ったら私はいけない。何かバスに乗る用事でも作ればいい。なにか欲しいもの……あ、そうだ。マーヤが隣町で撮影をしているって言ってたし見に行こう!
っていうことにしておこう。実際あるし。マーヤが言ってたしね。
私もバスに乗り込んだ。
「あれ、お姉ちゃん?」
「あ、ああ美鈴。奇遇だね」
「う、うん。お姉ちゃんバスに乗ってどこ行くの?」
「え、いや。隣町でマーヤが撮影してるっていうから見に行こうかなって。友達だし」
「そうなんだ。私たちも隣町に行くんだよ。ね、柳田くん」
男の子の名前は柳田くんと。
……いっそ聞いちゃうか。勘違いしてたら困るし。
「柳田くんって美鈴の彼氏?」
「ち、違いますよ! 僕は……!」
「もう! 私はお姉ちゃん一筋だよ。柳田君なんか彼氏なわけないじゃん!」
柳田君が崩れ落ちた。
いや、きいておいてなんだけど美鈴。やめて。隣の柳田君が死んじゃう。
「柳田くんはショッピングの荷物係。お詫びを兼ねてね」
「なんかしたの?」
「私のおっぱいを触った」
「事故で……うう」
なるほど。ラッキースケベか。
……まあ、揉めるほどの胸あるもんな。私なんてスカスカだしラッキースケベとなっても「あれ? 胸ないな」と相手は照れずに終わる。
女子としては屈辱だ……! そんなに巨乳が好きなのかよ!
「だから一週間ショッピングに付き合ってもらうの刑です」
「へぇ。美鈴ってあまり買い物行かないけどショッピングに誘うって……珍しいね」
「そうかな? 私だって女子だし服は欲しいからね! 高校生になったしバイトするよ! お姉ちゃんに服買ってあげるからね!」
「ふふ、ありがとう」
彼氏彼女の仲ではなくてよかった……のか?
いや、よくないだろ。このまま美鈴が姉離れしないと結婚すらしなさそうだし。そろそろ姉離れさせるのも考えたほうが……。い、いや。あとででいいな。うん。あとでで。突然だと寂しいし。
「……広瀬さんのお姉ちゃん可愛いじゃん」
「でしょ? わかってるぅ」
と、その時だった。
バスが止まって、誰かが入ってくる。
「あ! 広瀬さんじゃないっすか! お久しぶりです!」
「あー……」
君はいつぞやの……。
「こ……大林君!」
「言い直しても違いますからね?! 俺は神林っす! 広瀬さん!」
神林君だ。いやぁ、覚えてなくてごめんね。
「あ、あああ、あの! 俺と付き合ってください!」
「……いきなり」
「思い立ったが吉日が俺のモットーなんです!」
……どうしよう。
すると、美鈴が立ち上がる。
「……お姉ちゃんに告白するなぁアアアア!」
「え?」
「私のほうが好きなんだぞぉおおおお!」
「えっ、あ、その」
「撤回しろ! 撤回するんだ! 撤回します! はい撤回! てーっかい! てーっかい!」
「の、脳が揺れる……」
美鈴が神林君を揺さぶる。
……美鈴は相も変わらずシスコンでした。
てーっかい! てーっかい!
撤回のシュプレヒコール
次回予告:ミキちゃんやらかします。今世紀最大にやらかします。