初心に帰ろう
妖精の国シルフィ。
妖精王シルフィが治める国。妖精は自由気ままだけれど統率を取る人がいなければだめらしい。ただ、妖精王は臆病らしく部屋から出てこないらしい。
まぁ、好きにさせてもらうけど……。
「やっと着いたぁ!」
「道中厳しすぎるっての……」
うん? 誰か来たみたい。
視線をよこすと男の子と女の子。わざわざ難しいほうから通ってきたのだろうか。もう簡単な道は開いているというのに。
知らないのかもしれないけど……。
「というか、回復! ポーションもないっての!」
「そうだね! 買わないと!」
と、私の横を通り過ぎる。
……まぁ、頑張ったっていうことで……少しはいいことをしてもいいかもしれない。本の気まぐれ程度なんだけど……。
「回復」
ヒールをあの子たちにかけてあげた。
「うん? なんか体が軽くなった!」
「体力回復してる! なんで!?」
ふふん。辻斬りならぬ辻ヒール。
どうせMPなんて腐るほどあるんだしこういう風に使っても文句は言わないだろう。いいことをした気がする。
「ミキはクールに去る……」
「待ってください!」
と、引き留められた。な、なんだよぅ。ここはクールに去る流れでしょ?
「あ、あなたがかけてくれたのですか? ひ、ヒールを!」
「う、うん。まぁ、なんとなく気まぐれで……」
「ありがとうございます! ピンチだったので助かりました!」
「いやいや。ほんの気まぐれだしお礼は……」
私は楽なほう通ってきたし……。
「よければフレンドになりませんか?! 私はむ~といいます! こっちの子はザキです!」
「フレンド……まあいいけど。私はミキ。申請送ったよ」
「ありがとうございます! 始めたてなのでいろいろと頼みごとをするかもしれませんがよろしくお願いします!」
と元気良く去っていった。
始めたてってことは初心者? よく第八層エリアまで来れたな。レベルも相当高かったしゲーム慣れしてるんだなぁ。私も始めたての頃は……うん。なんか変わってないような気がしなくもない。
「……初心に戻って狩りでもするか」
最近、ろくに雑魚敵と戦ってない気がするんだ。カモシカとか狩ってた頃が懐かしい。ナパーム弾で倒してしまったのはいい思い出だよ。
出るモンスターの確認と化しておいて、あとはこのエリアの攻略クエストの判明を優先させるべきか。妖精の国だし妖精王が絡んできそうなのは予測できるけど……。
でも、クエスト自体あるのだろうか……。
だって妖精たちに悩みとかなさそうだし。王はいるけど基本的に気に入った人間としか関わらないっていう感じだしなぁ。
自由気ままっていうのがこりゃまた……。
クエスト生まれるのかこれ。