時間逆行
私たちはクロックが最初にいた部屋に赴いていた。
ピエロの仮面をかぶったクロックはこちらを見ている。
「鍵、これですよね?」
「おお! 見つけてくれたのか! ありがたい! じゃあ、今からでも解放しよう……」
とクロックは立ち上がり、ドアから出ていく。
ガチャリとしたから音が外から聞こえる。裏口が開いていた。
「やっとだ! 毎年毎年冒険者から早く鍵見つけろだの言われなくて済むぞ! いやぁ、助かった。礼を言うよ。お嬢様方」
大変なんだなぁ。
まぁ、冒険者の気持ちもわからなくはない。このルートが一番安全なのだから安全なルートから行こうと思うのは普通のことだと思うし、何かしらの不満は出てくるだろうし。
「さて、私は君たちに礼をしたい、のだがなにをしたらいいのかわからない。要求を聞こうか」
要求、か。
うーん。欲しいものは今のところないんだよね。お金もあるしレベルも上げる気はないし。
「レベルを1に戻せたりとかできる?」
「可能だな」
「まじで?」
ならもう一度やり直してみるか?
強くてニューゲームって一度やりたかった……んだけど無理そうだし。
「ああ、いや、一つこのスキルをやろう。便利なスキルだ」
「スキル?」
《スキル:時間逆行を取得しました》
「時間逆行といってな。戦闘中に使えば戦闘前の状態に戻れるスキルだ」
「……メリットあるのかな」
ソゥ様がそうつぶやく。
いや、ある。デメリットもあるけれどメリットもちゃんとあったりするんだ。
「死しても使用可能、睡眠時にも使用可能だな。ただ一度の戦闘で一度きりしか使えぬのが難点だ」
「それ以外にもデメリットはあるけど使えますよ」
「ほんと? たとえばどういうメリットがあるのかな」
「状態異常の解除、簡易的な死者蘇生ですかね」
「そうだ。これは自分の時間だけが巻き戻るので相手は巻き戻らぬ。自分しか生き返らぬが自分が死んでも使用可能なのだ」
これはなかなかいいスキルなんじゃないだろうか。
ただ、懸念事項もないといえばうそになるけれど。というか、それが一番のデメリットなのかもしれない。
「クロック。これってバフとかかけられてたらそれも解除されるんでしょ?」
「その通りだ。戦闘前に戻すのでバフがかかっていたらすべて解除される」
そう。
私の持つ死者蘇生の魔法はバフとかの効果を残したままで蘇生する。
だけれどこれはバフ解除自分のみということだから劣化版死者蘇生といったところか。露骨なぶっ壊れだとは思うんだけど。一度死ねるということがでかいかもしれない。
「だがメリットは大きいと思うぞ? 一度死ぬ体験ができるしな。悪くないスキルだということは保証しよう」
「そうだね。ありがとう」
時間逆行を手に入れて、私たちは裏口から出ていった。
次から新エリア!
時空の塔はつなぎですからね。短いですね。