賢者オズ
場所は変わってハーメルンたちは戦っている。
ファンタジアと呼ばれる者たちは決まって特殊な能力を兼ね備えている。ハーメルンや、ドロシーももちろん持っている。
「ハーメルンさん! 本気でやってくださいよぅ!」
「……そんなに見たい?」
「死んじゃいますってえ!」
ドロシーは戦闘慣れしていないので一匹一匹手一杯にやっていた。
護身術を習ってるとはいえ元はといえば普通の村娘だった彼女。もちろん戦い慣れているわけはなく、一般人より少し戦えるかな程度の実力。
彼女は自分に能力があることは未だに知らなかった。
「いいよ。なら僕の最高の音楽を聞かせてあげようか」
と、ハーメルンは大きく笛を吹いた。
ネズミが集まってくる。すると、ネズミは巨大化し、そして、目が黒くなっていく。ハーメルンの能力はネズミの超強化。
ネズミ限定だがいたって強力な力であり数が多いネズミが町を駆け回ることにより敵も殲滅できるだろう。それに、相手は食べ物。ネズミはかじりつくだろう。
「さぁネズミたち。食い漁れ!」
「は、ハーメルンさん? す、姿が……」
「ああ、これは本気を出すとなるんだよ」
ハーメルンの容姿は普段と違い闇に半分染まっている。
目は赤くなり、体が黒くなっている。不気味。そうたとえることができる。ただただ不気味だった。
「ドロシー。次は君の番だ。君も能力を……」
「能力? 私には……」
「ある。君も僕と同じ匂いがするんだ」
ドロシーは困惑するのだった。
いきなり能力といわれてもどうやって出していいのかわからない。そもそも自分の能力がわからないから、どうしろって言われても……。
ドロシーはとりあえずお願いしてみた。能力よでて、と。
すると、魔力が高まっていくのが分かった。
容姿が変わっていく。金髪でオーバーオール姿だった彼女がローブを見にまといそして、胸が膨らんでいく。もはや別人と呼べるほどに変わっていくのだった。
「……その姿は?」
「ふむ。久しく出れた」
それは初めての邂逅だった。
「ふむ、見ない顔だ。名前は?」
「名前……? 僕はハーメルン。君はドロシーで、いいんだよね?」
「違うな。我はドロシーの別人格である。賢者オズ……とでも名乗ったらわかるだろう」
ハーメルンは知っていた。
かつて魔法を使って世界を変えた女がいると。その名前はオズ。文献にも物語にも登場する有名な人物だった。そのオズがドロシーの別人格だった。
「我とドロシーは記憶をあまり共有はしていない。大事な記憶くらいだろう。ミキというものの仲間になっているということだけしかつながっておらぬ。我のことはオズと呼べ。ドロシーにオズの存在を伝えるなよ」
「わかった」
「話が早い。それで我はなにを……なるほど」
オズは状況を見て理解した。
「お菓子の魔女め。我が出ていないのをいいことに。灸をすえてやるとするか」
そして、オズは広範囲の魔法を放った――
それを見ていたプレイヤーは、化け物だと思っていた。
ドロシーはオズの存在を知りませんがオズはドロシーの存在を知っています。
オズ状態になればアリスと並ぶ強さ……を持っていますが、ドロシー状態だと弱いです。
ちなみにアリスは別格。王と名乗るだけあり強いです。ただアリスは能力を使うことは滅多になくほぼほぼ拳で闘うことを生業としています。彼女曰く「ムカつく奴ほどぶん殴る」ということ。