ドロシーと本の世界 ②
ジャボジャボと水を歩く。
「何か見つかったー?」
「いいえー」
思い出すのはエルルゥたちと出会った精霊王イベントの下水管。
あそこと似ているが、ゴミはなく綺麗だが底が見えない水。私たちは手探りで水の中に何かがないか探しているけれど特になにもなし。
「ふむ、となると水の中にはないのかもしれぬな」
アリスがそうつぶやく。
確かにその可能性はありそうだけど壁にも何もなさそうだし。となると、どこかにヒントがあるのかもしれない。たとえば……農園のどこかに。
ここじゃヒントになりそうなもの、ないからね。デコボコした壁じゃないし。
「ドロシー。農園で何かなかった? 水に関することとか」
「水に関することですか? うーん……。特にはないですね」
「そっかぁ」
ヒントはないかぁ。
手探りってわけにもいかないし、そこまで鬼畜でもないだろうからどこかにヒントはあると思うんだけど……。
ここでどうしろっていうんだろう。
わからない。
「ふむ」
アリスが壁をこんこんと叩いている。
「ソゥ様は疑問点とかありますか?」
「疑問? まぁ、なくはないよ」
「言ってみてください。もしかしたら出れるかもしれません」
「わかった。私が疑問に思ってるのはどこから水が出てるのかなーって。ほら、この家って農園の端っこにあるじゃん? この水が出てるところから先はなにもないんじゃないかなぁって思ってるんだけど……」
……それだ。
「それです。農園から出れないと思ってたんですがたぶん……」
私は水が出ている壁をこんこんと叩く。
そして出ていないほうの壁も叩く。音が違う。水が出ているほうはやっぱり壊せそうだ。
「ここの壁、壊せる」
「……どうやって壊すの?」
「妾がやろう」
とアリスが前に出る。
アリスは思いっきり拳で壁を殴る。すると、バラバラと壁が崩れ、階段が開かれるのだった。アリス武闘派……。ということはおいておいて。
ソゥ様の疑問からいけた。さすがソゥ様!
「すごい! ミキよくわかったね!」
「ソゥ様のおかげです。私も疑問に思ってませんでしたから」
私もてっきり農園から出られないという印象が強すぎてないと思っていた。けれどあった。些細なことでも疑問に思わなくちゃ出れないってことがよくわかる。
あとは、物がある位置とかもなるべく記憶する必要がありそうだ。メモでもとっておこう。
「さて、いこっか。新たなエリアに」
「はい」
私たちは階段を上がる。
あがるのだったが少し、不思議な部屋があった。階段の途中に設置されていた部屋。どうにもおかしいと思い、みんなを見る。
「……怪しいよね」
「入るのか?」
もちろん、入る。
私はドアを開けた。
すると、目の前にいたのは案山子とブリキとライオンの魔獣だった――