国盗り合戦 ⑤
戦争は一日で終わるわけがなく。
撤退したと思いきや翌日攻めてきたりして。一週間はかかったと思う。まだ一週間で終わるのは戦争としては早いんだろうけど……。
でも、まぁ、結果は、わかるでしょう。
うちの圧勝です。
相手方のロッソは大きく敗れ王が自害した。
そして、賠償金として金を要求したが払えず、土地を差し出すことになって国の領土が広がっていく。というか、ロッソという国を飲み込んだアドバンス王国だった。
これで、ワールドイベントも終わりかなー。疲れたんだけど……。
王は目の前で演説をしている。戦争に勝利したこと、頑張った私たちのことをほめている。
それを傍から聞きつつ私は壁にもたれかかった。ゲームでこんなに疲れていては世話がないな。明日から春休みだしね。現実ではもう3月だ。
三年生も卒業して、今度は私たちが進級する。チリンはぎりぎり進級できたらしい。
ゲームもゲームで楽しいけど、そろそろ進路のこととか考えないとまずいのかもなぁ。大学には行きたいけど適当に決めていいことじゃないしな。
人生を分けることになるかもしれないから。
こんなとこで戦争なんかしてる場合じゃないんだよなぁ。
《ワールドイベント:国盗り合戦 をクリアしました》
《Another Arcadia Onlineのアップデートを始めます。皆さまは一時間後には強制的にログアウトさせられます》
そのアナウンスを聞いて、私はログアウトしたのだった。
『進路? 私は働くよ』
『私はゲーム作りたい! 意地でも進学!』
地衣と珠洲にメールで進路を聞くとそう返ってくる。
地衣は労働大好き人間だし珠洲はゲーム作るって昔から言ってたな。私は特にやりたい職業とかないんだけど……。
「いや、ほんとどうしよっかなぁ」
ベッドの上で携帯を見上げながら考えていた。
やりたいことないからなぁ。趣味を仕事にしたくはないし。というかしちゃダメだってよく言われてる。趣味を仕事にするのはダメだけど仕事を趣味にするのはいいのかな……。
いや、私は進学ということは決めてるんだ。
まぁ、いいところは出たい、よな。
うーん。
先生には東京の大学も行けると言っているんだ。そこを目指すのもありなんだけど……。う~ん……。東京で一人暮らしをするっていうのもなんだか嫌だしなぁ。
料理はできるし掃除洗濯ももちろんできるけど……。っていうか家事は一通りできるか。
珠洲が言うには私にできないことはないってこと。さすがにできないことはあると思うけど……。
「んー、どこ行くかよりまずどういう条件がいいかで絞り込めばいいのかな」
とりあえず学費かかってもいいからいいところ。
かといって一浪もしたくないから私の学力で受かるところ。なるべく地元の近くがいいけどいいところじゃないなら東京も考えていいか。
……。お、ここなんかいいんじゃないか?
「……ま、第一志望は此処かな」
とりあえず、高三になる心構えだけはしておこうかな。
処刑されるくらいならと自害した王。もはや王ではない。ただの愚物。
最後は現実のお話。