カティ工房
防具はローイさんに任せるとして、次に買いに行こうとしたのは武器だ。
よくあるRPGでも武器を手にして戦っている。素手で闘うというのもゲームとしてはあまりやりたくないから武器……。魔法使いと言えば杖だろう。
杖を求めて違う人の工房にきていた。
「あらー、チリンいらっしゃい」
「カティ姉さんちーっす」
また知り合い。
「ミキ。ここは木材の加工を専門とするカティ工房。あそこにいるのがマスターのカティ姉さんな」
とカティ姉さんという人に目を向けてみると女性とは思えないほどガタイがよく、筋骨隆々。たくましく頼りになりそうな感じがする。笑顔が素敵な人だ。
「マスターのカティよ。これでも私はプレイヤーだからね」
「あ、ミキです。よろしくお願いします」
深々と一礼。
「それでチリンは何の用かしら。私弟子に教えるのに忙しいのよ」
「あー、武器作ってもらいたくて」
「武器? そこの魔法使いちゃんの?」
「はい。とびきり高価な杖を」
「……そうねえ。今のところ高価なのはマジカルウッドぐらいだけど」
マジカルウッド?
「じゃあそれで」
「かしこまりい。……っていいたいところだけどものすごく高いわよ? 杖はβ時代の特典の木材で作られたものだからとても高価に設定してあるの。百万近くかしらねえ」
「ひゃ、ひゃくまんえん!?」
そ、それってものすごく大きなお金じゃん!
いいよ安っぽいので! 安いのでも我慢するよ私!
「出世払いできますかね」
「ダメよー。ローンならいいけど」
「……10年ローン?」
「四か月ローン」
珠洲……もといチリンもとても高価なために少し驚いている。
「これでもずいぶんと負けてるのよ? 私は普段ローンなんてしないし。現金一括で払ってもらうのよ。ローンなんて組んだら絶対すっとぼけられるしね」
あー、誓約書とか書いても実際に手出しはできないから意味がないんだ。
プレイヤーキルしてまで借金を取り立てたくないってことなんだろうなあ。
「私はチリンを信用してるからこそローンなんて組んでるのよ? 友達のためなら少しは譲歩しなさいな」
「……へーい」
気の乗っていない返事だった。
「それでミキちゃん……だっけ。ミキちゃんは何属性の魔法が得意なのかしら」
「属性ですか?」
「そう。火属性、水属性、風属性、土属性、光属性、闇属性。のどれかの魔法よ。得意な属性で付加をつけるから教えてくれるかしら」
「あー、得意なのは全属性です」
「ああ、全部均等に育てているのね」
「い、いえ。私は全属性精霊魔法というものを取得しているので……」
「せ、精霊魔法!?」
何やら驚いていた。
精霊魔法っていうからには精霊の種族を取れた人は使えそうな気もするんだけどね。精霊王ってあるくらいだから精霊もいると思う。
「精霊魔法って……まさかあなたは精霊王なの……!?」
「え? まあ、そうですけど……なんでわかったんですか? 普通の精霊という可能性もあるのに」
「いや、ないわよ! このゲームで唯一なれない種族があって、それが精霊なの! ……まあ、精霊になれない理由はのちのち説明するわ。それより、精霊王って……。精霊王様の杖を作りに来たの? チリン」
「うん」
「なら最初に言いなさい! 精霊魔法用の杖を作りたかったのよねえ! 普通の杖なら魔法の威力上昇とかそんなのだもの! 精霊魔法に効果がある杖なんていまだに見つかってないの! ああ、夢だったのよねえ! 精霊さんに私の杖を使ってもらうの! ねえ、タダにしてあげるから作らせてくれないかしら! その、私のところだけで武器買うようにしてもらえると嬉しいのだけれど……」
独占ということか。
まあ、困ることじゃないし別にいいか。タダって言われてるしそれに甘えさせてもらうとしよう。
「わかりました」
「交渉成立ね! 腕が鳴るわー! 研究よ研究! 今日はぶっ続けでA2Oやるぞー!」
そう意気込んで、作業を始めた時。
《六つの王すべてが誕生いたしました》
というアナウンスが聞こえたのだった。
この作品は毎日12時投稿という形にしたいと思います。
一日一話ずつ載せていきたいと思います。
あと精霊王さんは物理に関してはめっぽう弱いです。
魔法特化しすぎて物理がダメになってます。弱点は物理です。つまり(物理)とつければ精霊王さんは陥落します(物理)
あと、感想も是非書いてもらえると嬉しいです!
完全に見切り発進なのでいつ停滞かわかんないんです…。
感想くれたら励みになりますし、やる気も出ます。
あ、でも誹謗中傷とか「つまらない」ってのだけはやめて……自分でも薄々思ってますから……
あ、後書きがうざいってのもなしで。