勇気ならざる蛮勇の勇者 ②
ユウキはあのバカでも心配をするらしい。あのバカはまだ懲りていないらしい。
私があれほど説教をしたのにさ。無駄だったようだな。勇者じゃないあれは。蛮勇者っていったほうが正しいのかもしれない。
勇気と蛮勇は違う。
私はクエストクリアのためにハーメルンとルシファーを連れてユウキが言った場所に向かう。他に仲間を連れてこられたらよかったんだけどさっき更新が入ってNPCの仲間は2体までしか連れ歩けないとされたから……。中途半端なときに更新を入れたもんだよ! おかげで待ってる間ちょっとそわそわしてたんだからね!
「もうすぐで頂上……!」
その時だった。
ドラゴンの咆哮が耳に響いてくる。どしんと地響きも起きていた。グラグラ揺れる地面。思わず飛行スキルを使用し、空に舞う。
すると、ドラゴンと戦闘を繰り広げている男の子がいた。
あれは勇者……。あのバカだ。
ドラゴンにはダメージ一つもないけれどあの勇者はものすごくダメージを受けて瀕死状態になっていた。
「ルシファー! あのドラゴンの攻撃をこっちに向けさせて!」
「かしこまりました」
ルシファーは弓矢を引き絞る。
そして、一閃。矢がドラゴンの頭に刺さった。こちらをぎょろりと睨むドラゴン。ものすごい迫力でちょっと圧されたじゃないかよ。
だけどまぁ注意がこちらに向いた。私はあの勇者をつれて逃げるのみ。ここで闘うわけにはいかないからね。
「ハーメルン! ネズミ連れておいて!」
「わかった!」
急いで男の子の元に向かう。
男の子は血を流していた。意識はないが心臓は動いている。回復魔法をかけておく。自業自得の結果なんだけどさ……。
今回はユウキに感謝しなさいよ。クエストじゃないと助けないからな。以前も忠告したはずなのに破りやがってさ。
「ハーメルン! 連れていって!」
「わかった!」
ハーメルンが操るネズミに乗せて男の子は運ばれていった。
運ばれる男の子を狙ってドラゴンが火炎放射をしようとしている。
「甘い」
ルシファーが剣で口を貫いた。
火炎放射を途中で止められ顎が閉じてしまう。そのまま熱が逃げなかったのか熱そうにじたばたと悶えていた。
私たちはどうやらこのドラゴンの気を引く作業となりそうだ。
「ルシファー。死なないでね」
「神の御前では死にませんとも。神に一生を捧げたのですから」
「ならよかった」
蘇生魔法があるとしても余計なMPを使いたくはないからね。
「ルシファー、勝てそう?」
「……私一人では難しいかと」
「難しいということは、できる可能性はあるんだ」
「多少なりとは」
……可能性があるのなら。やる。
私も今回は攻撃サイドにも回る。ルシファーだけならば回復しつつ攻撃もできると思うんだ。状況を見てサポートしていくしかないな。
「……やるか」
「かしこまりました」