ファンタジア
シャルルちゃんを誘拐した。
「ハーメルン! 遊んで!」
誘拐されたともつゆ知らず遊んでなんていう無邪気な少女。
ハーメルンはそれにほだされていて笛を吹いてあげたり優しい一面を見せていた。ハーメルンも子供は好きらしい。
さっきまで復讐に燃えていた、と思えないほどに。
「ありがとう。僕の復讐に。まだ攫ってきただけだから大変だろうけど……。でも相当なダメージを負わせたと思えるよ」
「そう?」
「うん。でもこれじゃまだ駄目だ。見つかるわけにはいかないし、僕だけだといずれ捕まると思うんだ。だから、お願いがあるんだけど……」
この流れってもしかして。
嫌な予感がする。いや、もういれること前提何だろうか。いや、前提だなこれ。
「僕を君の仲間にしてもらいたい」
と頭を下げられた。
隣ではシャルルちゃんが首をかしげている。可愛い。
「わかったよ……。でも仲間だから戦ってもらうこともあるからね」
「いいよ。多少なら戦える。笛があれば」
仲間、また増えた……。
馬車でも用意するか。
《クエスト:ハーメルンの笛吹き男 をクリアしました》
《ファンタジアシリーズが解放されました》
……ファンタジアシリーズ?
ファンタジアシリーズとはなんぞや。
気になって調べてみるとこの世界に童話の主人公たちが入っているらしい。でクエストをクリアして仲間にすることができるとか。
掲示板でも騒がれていたよ。
多分きっかけは……。
「ハーメルンだよなぁ」
ハーメルンだって童話であるから。
ハーメルンの笛吹き男っていう童話……ていうか伝承。グリム兄弟を含む人たちが伝承として残したもの。
130人もの子供を笛の音で誘導し笛吹き男も子供たちも町に戻ってこなかったという話。童話っていうにはいささか子供に聞かせるような内容じゃない。
「ありそうなのは赤ずきん、豆の木ジャック、ヘンゼルとグレーテルとかか?」
たとえば森にはお菓子の家があってそこに魔女がいるから倒してほしいとか。
ヘンゼルとグレーテルの物語はあまり知らないけどね。というかグリム童話自体ほぼほぼ知らないんだ。浦島太郎とか桃太郎とか日本の奴なら少しわかるんだけど……。
「ファンタジア……ねぇ」
何か特別な力があるとかそんなのだろうか。
ないのなら特別仲間にする価値はないと思う。大罪だって仲間にする価値があったからこそ運営がアナウンスしたんだ。
だとするとハーメルンだって入れる価値はあるっていう話。能力……。いや、バフか? バフ系に特化しているのか?
そこらへんは要検証、かな。