嘘の証言
朝日が窓から差し込む。
早々に騒ぎになっている屋敷があった。
「シャルルがいない! シャルルがどこにもいないぞ!」
騒ぎまくる髭面の男。
家のどこを探してもシャルルがいないことに焦っていた。そしてその怒りはメイドに向かっていく。
「貴様ら! シャルルがいないぞ! どういうことだこれは!」
メイドはたじろいでいる。
自分たちも知らないからだ。いや、二人は知っているけれどあえて知らないふりを貫いていた。他の人が焦るならば焦るふりをしている。
「誘拐か!? うちのシャルルが可愛すぎて誘拐されたのか! 賊の侵入を許すなんてそれでも召使か! お前らは主の娘を何だと思っている! 減給するぞ!」
「そ、そんなっ!?」
メイドの一人が嫌がると村長はそのメイドに近づく。
「お前らの見張りが甘かったからこういう事態だったんだ! 昨日の見張り当番は誰だ!」
「え、エリィとナギサです……」
村長の視線が二人に飛ぶ。
エリィは冷や汗を出しているとナギサから指でコンタクトを送られる。それは”黙っていろ”ということだった。いや、口裏を合わせろ……まあそういうことと解釈した。
「おい。なにをしていたんだ貴様ら! なぜきちんと見張っていなかった!」
「誠に申し訳ございません! 賊の中に気配を消す魔法を使える者がいたようで……。看破の魔法を所持していない私たちでは見つけるのが困難というものでして」
「ならばずっと部屋の前で番をしていればよかっただろう!」
「ならば宝物庫などの見張りはできませんでした。そちらに行かれていたらどうしたのでしょうか」
「二手に分かれればいいだろう!」
「私たちは戦闘経験がありません。多少の護身術は嗜んでおりますが一人で賊の相手など無理がありますゆえ……」
村長はそう言われると黙ってしまう。
エリィは実は魔法の腕がすごいしナギサは武術をマスターしていることは秘密にしてるが。エリィは心の中でナギサを称賛していたのだった。
「まあよい! 金を使ってでもシャルルを探せ!」
「かしこまりました!」
メイドがそう返事をした。
二人のメイドはそれを聞いて少し笑っていた。
そして、メイドが街におりシャルルを探す張り紙をして冒険者ギルドにも掲示する。その張り紙を見て冒険者、プレイヤーがシャルル探しに躍起になるのだが、それはおいておこう。
「ナギサ先輩! ひやひやしたわねえ!」
「したわねぇ。ただ、ハーメルンは一泡吹かせられたわね。私たちもハーメルンの計画に乗った以上ハーメルンの有利になるよう手伝うわよ。エリィ。裏切ったらぼこぼこにするわよ」
「しないわよぅ……」
メイド二人はハーメルンが逃げた方向を向く。
そして、決意した。