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Another Arcadia Online  作者: 鳩胸 ぽっぽ
第七層エリア 【異界から来たるは勇ましき者】
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真野ちゃんたちとデート ②

 映画の上映時間になった。真野ちゃんが出演しているもので内容はラブコメディらしい。タイトルは”ソメイヨシノ”というもの。

 Sな彼女がMな彼氏との恋愛を描くラブコメディ。真野ちゃんはヒロインの友達役で結構重要な役らしい。ヒロイン級の可愛さなのに……。とりあえず真野ちゃん使っておけば何とかなるって思ってるだろ制作。そう思ってんなら主役やらせろよ。


 「楽しみだなー」

 「……うまい」


 席に座り広告を見ている。

 他の映画の広告とかだったりね。ホラー映画もちゃっかりと……。絶対見ないからな。真野ちゃんが出るとしてもホラーだけは勘弁して……。

 私がそう思っていると始まったみたいだ。


 『僕と彼女が出会ったのは高校二年生の秋だった――』


 出会いは普通なのかな?


 『もっと激しく! ほら、もっと激しくぶん殴ってくれ僕を!』

 『なにこいつキモ……。ほら、いこ……』


 開幕校舎裏でビンタされたのか顔を赤く染めた男の子が必死に土下座している。

 ……ドMってここまでの変態なのか。やばい。私だったら絶対関わりたくないね。現実にはいないでほしいと心底思ったよ……。


 『……見つけた。私の運命』


 なんだよ突然に。


 『君、なかなかキモそうじゃない』


 と男の子の頭を踏みつける彼女。うわぁ……。こういう女の子って嫌だよね。というかその角度とかスカートの中絶対見えるよね?

 いかんいかん。映画に余計なツッコミをいれちゃ……。


 「ミキちゃんミキちゃん」

 「なんでしょうっ」


 隣に座っている真野ちゃんが私の耳に口を近づけて小声でささやくように言った。


 「この人ね、本当にサディスティックなんだよ」

 「そうなんですか?」

 「うん。男の子のほうも実際のMでだからこそ結構リアルにやれてるの。どちらとも嬉しかったらしいよ」


 ということはこれほぼ素の演技なのか……。


 『あ、ありがとう、ございます?』

 『あらぁ、汚い口で喋らないでくださいますぅ? この変態がっ!』

 『ありがとうございますッ!!!』


 『すべては、この変な出会い方から始まった――』






 ……意外と面白かった。

 真野ちゃんが演じる霧立ちゃんも主人公に恋をしているけどその気持ちを必死に隠して染井さんと付き合うのを応援している姿はとても泣けたね……!

 自分の気持ちをひた隠しにしている友達、自分の気持ちに素直な主人公たち。友達と主人公はいわゆる対比の位置にいて人間関係や感情などの表現の仕方がとても絶妙。


 「霧立ちゃん健気でかわいい……!」

 「美咲は真野ちゃんの役なら可愛いっていうでしょ……」

 「実際可愛いんだし仕方ない」


 だから可愛いっていうのも何の問題はない。


 「……青春してるって感じだった」

 「わかる。青春してたよねぇ。私はする気ないけど。むしろゲームが彼氏かな?」

 「親哀しむよ……」


 真野ちゃん。珠洲に言うの遅いよ。もうすでに悲しんでる。たまに私に「男っ気の一つも見せないで明けても暮れてもゲームゲームだ」って愚痴ってた。すべてをゲームに捧げる気満々らしいです。


 「真綾たちはいないの? 彼氏とか」

 「いない。そもそも興味ない」

 「私もいないかな……」


 真綾と真野ちゃんは好きな人いないのか。私もだよ。

 

 「美咲ちゃんは?」

 「え? 私も特に……」


 その時だった。


 「あ! 広瀬さんじゃないですか! こんばんは!」


 と、男の子が私に声をかけてくる。

 えっと……。


 「うん? 美咲ちゃんの友達?」

 「うん。小林君……」

 「神林っす!」


 あ、そうでしたね。


 「大林君……」

 「神林っす!」

 「高林……「神林っす!」おおう……」


 ボケにも真面目なツッコミを……。


 「えっと、神林くんです。同じ学校の」

 「神林です! よろしく!」

 「……中村 真綾」

 「生出 真野です。よろしくね」

 「真綾さんに真野さん! もしかして、あの真野さんと真綾さんですか?!」

 「どの真綾かは知らないけど私であってる」


 神林君は驚いたように声を上げる。実際驚いているんだろう。


 「さ、サインを!」

 「はいはい」

 「いいよ」


 気前いいなぁ……!

 それにしても神林君はなんで映画館にいるんだろう。何か映画でも……。その時、神林君が手にしているパンフレットに目が行った。

 ……私は神林君から距離を取った。


 「ありがとうございます! それで広瀬さん……え、広瀬さん? な、なんでそんな離れてるの?」

 「……カエル。幽霊……」

 「あー、今から見ようとしている映画なんですよ」

 「……さっさと! 私蛙と幽霊は本当に見たくないの! さっさといって!」

 「ご、ごめんなさい!」


 神林君は逃げるように劇場のほうに向かっていった。










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いずれ王となる君に~部下である剣士の私はその才能をゲームでも発揮します~
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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