王たちへの下克上 ⑤
精霊の城というのは植物に囲まれている城だった。
薔薇の花や百合の花などが咲き乱れている中にぽつんと建っているお城。中は植物が生えている。ただただそれだけなんだけれども。
幻想的で、いい空間だねぇ。
「ミキ、寝なよ。私たちが見張っとくから」
「わかった……」
眠気がピークだった。
私はいつも夜10時くらいには寝ている。たまーに目が覚めると木があるけれど基本的に朝までぐっすり眠るタイプだ。
夜更かしはできなくもないけどきついの。ゲーム内では一日経つがために疲労もそれなりにはある。眠って回復したいけど出来ないっていうのがイベントの知識だと思っていた。
「おやすみ、ミキちゃん」
「おやすみなさい……」
☆ ★ ☆ ★
ミキが眠りについた後、チリンは剣を手にする。
「私たちのことよほど信頼してるんだろうね……。素直に寝たよ」
「これで計画を……」
「……ミキ、ごめんね」
チリンは剣をミキに突き刺した。
ミキは、そのままポリゴンとなって消えていった。
――っていうのは嘘でミキはすやすやと眠っている。
チリンはミキの前に剣を突き刺しただけだった。キルする目的ではなく護るために。剣を置き盾を立てかける。
そしてチリンはミキの前であぐらをかいて座っていた。
「本来は逆の立場なんだけどねぇ」
「いいじゃん。なにも協力し合うわけじゃないってことだよ」
「中立って感じだね」
中立的な立場にいた。
チリンはプレイヤーの邪魔をするっていうことも考えていなければミキたちをキルしようとも思っていない。
イベントは不参加っていう形をとっている。いずれ自分たち以外の誰かがやるだろうと信じているから。
「あ、そうだ。明日くらいにミキちゃんと一緒に私のところ来れる?」
「ん? なんで?」
「私が出演した映画観に行こうっていうお誘いだよ」
ソゥは人気女優だ。映画やドラマに多数出演し人気を博している。天才肌の女優だ。そんな女優にも悩みはあって友達がいないこと。
だけれど今はミキという友達もいる。ソゥは満足しているのだった。
「友達と映画観に行くってしたことないからさ、一回行ってみたい」
「わかった。ミキにも伝えとくよ。きっと泣いて喜ぶよ」
ソゥはミキの姿を想像した。
きっとおしゃれに気を使ってくるんだろうなとか、メイクしてくるのかなだとか。いろいろ考えてると思わず笑っていた。
ミキは普段からおしゃれも化粧もしないから、そういうミキを見たいと思っていたりもする。
「どんなおしゃれしてくるかな」
「ミキ滅多にしないメイクとかしてくと思いますよ。素材はいいのに普段しないし……。私もしないけど」
ただチリンはメイクよりゲームってことだからそういうのに無頓着なだけだったりするが。
「ふふ、やっぱりミキちゃんも女の子なんだね」
「……その理論で行くと私女の子じゃなくなるけど」
「じゃあ男の子なんだ」
「おっぱいもありますから女の子ですわ」
チリンは自分の胸を触った。