希望からなんかでた
「執筆完了です! ささ、この本を読むだけで力が戻りますよ!」
と言われたのでさらさらと本を読んだ。
《封印が解かれました》
《スキル使用可能になります》
よし。戻ってきた。
……剣でもやろうかな。今みたいに戦闘不能にさせられたら困るし……。
「危ないところだったよ。みんなありがとね」
「神がピンチのときに駆け付けなくては天使として失格でありますから」
「我はただ暇だったのでな」
ルシファーとベルゼブブがそう返した。
天使は神に仕えるから神がピンチの時にも駆け付けなくてはならないのか。
「あれ、アーサー王じゃないですか。回復したんですねぇ」
ガブリエルがアーサーを見てそう言っていた。
アルテナ様が介抱というか、治療するために林檎の島に置いていたからな。天使も知ってるんだろう。少なくともガブリエルは知ってるみたいだし。
「お初にお目にかかる。私はアーサー・ペンドラゴン。昔は一国を収めていたがもはや王でもない。王はつけなくてもいい」
「アーサーは円卓の騎士でもあったんですよ。そこにいるランスロットも」
「へえ。強いのか? なら手合わせしようじゃねえか!」
「遠慮しておくよ。今回の戦闘でちょっと疲れたからな」
「つれねえ奴」
つまんなさそうにアーサー王をみていた。
「天使さん! 天使さんです! 本物ですね!」
グィネヴィアがガブリエルの手を取っていた。
「う、うん? そうだけどどうしました?」
「すごい……! 神に仕える私として配下であり眷属である天使さんに出会えるなんて光栄ですよ! サインください!」
「ははは、有名税というやつかな? いいよ! サインならいくらでも~」
ガブリエルは気分よさそうだ。
メモ帳にガブリエルと自分の名前を書いて渡している。グィネヴィアだけじゃなくランスロットやアーサーにも渡していた。
「ガブリエル様! ということは仕えている神は創造神アルテナ様ですね」
「お、わかるのかい?」
「ガブリエル様、ラファエル様、ウリエル様、ミカエル様は有名ですから! ガブリエル様は天の書記官として光神教の教徒に広まっておりますから!」
「て、照れるなぁ!」
グィネヴィアは敬虔な信者。ガブリエルは嬉しそうだ。
「……ん? ガブリエル様であちらの天使様はもしかして戦いぶりからすると……」
「ミカエルだよ。ほら、ミカエル。挨拶しなさい」
「ったくめんどくせえなぁ。私はミカエル。それでいいか?」
「やっぱり! 戦闘の天使と天の書記官二人をお目にかかれるなんて……! で、そ、そちらの天使さんは堕天使ルシファーですか?」
「……だからどうした?」
堕天使と言われて少し顔をしかめていた。堕天使と言われたくないんだろうか。まあちょっと過去にも関わってくるし嫌な呼び方ではあるんだろうな。
「すごい! アルテナ様が最初に創った天使さん! 堕天使と言われているけれど神への忠誠心は天使の中で随一! ふぁあああああ! 生きてるうちにお目に書かれて光栄です!」
「……やめろ。むず痒い」
あ、喜んでる。顔を赤くしている。
「ああ、今日私死ぬんですね。いいんです。希望の中で死んでいくのなら……。サヨナラ、ランスロット様……」
「お、おい!? グィネヴィア!? しっかりしろ!」
グィネヴィアは意識を失った。
すると、体から何か飛び出してくる。また蜘蛛だった。でかい。けれど、なんか、敵意を感じない。
「感情が魔物になるトリガーが引きっぱなしだったんだな。また討伐を……」
『希望ってすばらしいです』
ん?
『私は希望から生まれました。害をなすつもりはありません。貴方様に女神の祝福があらんことを……』
え、希望からも魔物生まれるの?
と、私たちに糸を吐いてくる。だけれどそれはべたついていなかった。むしろ優しく包み込んで回復してくれていた。先ほどの戦闘で減った体力が戻っていく。
さ、さっきのやつと真反対じゃないか!
鑑定してみると”希望の大蜘蛛”という正反対の魔物だった。
『ああ、生きてるって素晴らしい……!』
「……希望ってすごいですね。これなら話わかるんじゃないですか?」
「とりあえずグィネヴィアの体を治すぞ。魔物を作れないようにしないとな。ベルゼブブ」
「なんで我なんだ」
といいつつベルゼブブはグィネヴィアの体に触り魔力を送っていた。
えっと、目の前の蜘蛛、どうしたらいいの?
希望ってすごいな(適当)