グィネヴィアには明日がない ①
王都にいるとたまにだけれどものすごく高貴な人に出会う。
貴族……と呼ばれるんだろうか。その人たちがいる。異世界って感じがすごいよね。いると思ったよ。貴族という輩が。
で、魔法学園……ってのも一応あるらしく、プレイヤーがそこにいくとすごい魔法を教えてもらえるという話もある。
私は興味ないけど魔法学園に行ってみた。
魔法学園には制服がないと入れないらしく、制服は”花の仕立屋”という店で販売されている。なぜ来たのかと言うと、聖杯戦争と呼ばれた戦争の書物を見るために。この学園の図書室で閲覧可能という話を聞いた。なぜ気にするかというとグィネヴィアの居場所。
「しかし、魔法というのはすごいものだな。私は全く使えないからあこがれもある。ランスロットはたしか水の魔法を使えたな?」
「はい。湖の騎士ですので」
アーサー王は魔法の練習をしている人を眺めていた。
「魔法っていうのはこう、不思議な力を感じるな」
「それが魔力ですよアーサー王」
「ほう。魔力……。感じることはできるんだな」
感じるけど魔法を使えないということか。
そういえばエクスカリバーが光るのはあれ魔法じゃなくて聖剣の仕様か。
「さて、図書室にサッサと向かおうか」
図書室は本が多かった。
錬金のレシピ本だったり料理のレシピ本だったりなどバリエーションに富んだ本の数々。聖杯戦争は歴史の部類になるだろうから。
グィネヴィアの居場所を探すのはランスロットのため。ランスロットはグィネヴィアが入った修道院を知らない。もしかしたら書物に……と思ったわけなんだけれども。
「やはり、裏切りの騎士……として書かれているな。こう、心に来るな」
「落ち込むな。私は裏切られたと思っていないから安心しろ」
聖杯戦争について書かれた本を手に取って読んでいたランスロットが落ち込んでいる。
「ただ、書いてある事象はその通りだ。ランスロットとの戦争、聖杯を見つけたのはパーシヴァルたち……。間違いはない、が」
なんか嫌そうな顔をしている。
「これは主観でしか書かれていないな。グィネヴィアもまるっきり悪人扱いだ」
「くっ……」
「あいつは優しくて気が利いて……。天然でドジなところもあるがいいやつなんだ。許せないな。私の親友だと思っているやつがこうして脚色され書かれているのは」
アーサー王がこぶしを握り締める。
グィネヴィアはそんないい人なのか。会ったことないから知らないけど。でも、物語のグィネヴィアはランスロットと不倫して……とかそんな感じだから私もあまりいい印象はない。
「グィネヴィアがいるのは王立修道院……。王都の郊外にある」
「あまりいい噂はないらしいな。本でも残虐な行為をされている絵が描かれている。グィネヴィアは拷問を受けている可能性が高い」
……拷問だって?
そんなのはダメだよ。いや、私の……日本人のエゴかもしれないけど人死にとかはあまり見たくないし拷問もそうだよね。
私も拷問は嫌だ。
「大変だ! 助けに行く!」
「ミキ。言うと思ったよ。行こうか。ともに」
《クエスト:グィネヴィアには明日がない を開始します》