ワイバーン、飛来 ②
ワイバーンが目の前にいる。
人々を襲いかかっていた。
「勇者様! 助けてください!」
「え、あ、おう!」
勇者は剣を構える。
ワイバーンと睨みあう。だがしかし、今の勇者だと勝てるわけがない。レベル差があるんだからさ。レベル差がありすぎてワンパンされるだろうというくらいしかない。
介入するしかないでしょ……。
「ワイバーン! 俺が相手してやる!」
「私たちがする」
剣を構えた勇者を突き飛ばし、私が対峙する。
「な、なんだよあんたらは! 俺の活躍を……!」
「死にたいの?」
「は?」
私が生命の主神になって分かった事実がある。基本的に蘇生魔法がないことだ。蘇生薬もあまりない。なぜなら本来の命は一回だけ。復活することはまずない。
この世界を現実として考えるとまず死者の蘇りはあり得ない。死んだら死んでしまう。ただそれだけの世界だ。プレイヤーはリスポーンするけどごく一部のNPCを除いてNPCはリスポーンしないから。
勇者が死んだらそのままだ。
「ろくに戦ったこともねえんなら黙っておきな!」
「ワイバーンのくせに生意気だぜこら!」
ミカエルのテンションが最高潮だ。
ゴエモンに叱られた勇者は少し睨んでいた。異世界転生したら誰だってチートをもらえると思わないでほしい。そもそも、命は基本的に一つなんだから死にに行かないでよ。
ただ死にに行くだけの勇気は蛮勇っていうんだよ。
「ここはあたしの最終兵器を見せる番だなァ! これが神の武器とも呼ばれた……。ガトリング砲だぜ!」
と、ゴエモンがガトリングを取り出した。え、そんなんありなの? このゲームに銃って登場していいの? っていうか作れるの?
……あー、いや、あっても別に不思議はないのか。第二層エリアなんて近未来だしねぇ。
「そこの天使退け! 今から花火を上げるからよ!」
「おう!」
ミカエルが避ける。
そして、ガトリングが発射されたのだった。銃弾がワイバーンに当たる。叫び声をあげて苦しんでいた。
……まぁ、初心者プレイヤーもあの中に混じってるけど……。完全に流れ弾いってますけど……。
しばらくして銃撃が止んだ。
「弾切れだ」
ガトリング砲を捨て剣を構えた。ワイバーンの体力はそれほど減っていない。この程度で簡単に死ぬなら緊急クエにしないだろう。
だがしかし、少ないといっても三分の二は削れたんだ。
「ここから畳みかけるぜ! ゴエモン! 私の後に続け!」
「おう! 合点だ!」
さて、私はと。
王国の兵士は人々の避難を。召喚された勇者もさきほど突き飛ばされた人以外逃げていた。いや、正確には戦闘の邪魔にならない場所で観戦していた。真剣なまなざしで。
私は勇者のほうに攻撃行かないように専念すればいいか。
それに、ハクビとメアリがいるしね。
「ハクビ。メアリ。あっちいってようか。戦闘はミカエルさんたちに任せて」
「行きましょう! ほら、ウサギさん召喚してあげますからね」
あの二人なら戦闘も強いだろうし大丈夫だろう。
ただ、いつ死んでもいいように蘇生魔法は準備しておかなくちゃな。
戦闘は今回しませんね。ただ見てるだけです。