ワイバーン、飛来 ①
どうやら王都の大通りで勇者召喚のお披露目会みたいなのをするらしい。
召喚された勇者が通りを歩くということで見物人がたくさん集まっていた。通るであろう大通りは人でぎゅうぎゅう詰めであり勇者が歩く場所以外場所がない。
なら私たちはどこで見るんだろうか。
いや、私は飛行スキルがあるからいいけどさ……。
「おっと」
背後から矢が飛んでくる。それをシルクはキャッチした。矢には手紙がつけられている。
「へえ。どこから飛んできたかわかんないけど矢文ねえ。どれ……」
シルクが道端で読み始めた。
「……悪いけど僕行くね。王様から呼び出されたよ」
「そうか。なら勇者は見といてやるよ」
「はは、わかったよ。まあ僕は近くにいるだろうけどね」
「ああ、なるほどな」
あ、なんとなく手紙の内容がわかったわ。
シルクは師事をするのか。師匠っていうことになるのね。一人盗賊志願者がいることが驚きだけどね。若干嬉しそうだ。
そして、シルクは身軽な身のこなしで人の間を抜けていく。見えなくなった。
「さて、あたしらはどこで見ようかねェ。やっぱりここは建物の上しかねえか」
「そうだね。ハクビ……あれ?」
ハクビがいなくなっていた。
「勇者が通るぞ!」
そして、勇者の行進式が始まったのだった。
ハクビを探していた。
どこに行ったんだろうと思うと、勇者の姿が目に入る。慣れない鎧を着て四苦八苦してるようだった。重いとか呟いてる。いや、まあ重いよな。金属の塊だもんな。
まあいいや。
ちょっくら飛んで観察を……。
「子供が侵入したぞ!」
……。
飛行スキルでその子供を見てみる。案の定ハクビだった。
ハクビは勇者まで一直線にかけていく。なにがしたいんだあの子は! 私は地面に降り立った。ハクビは騎士の人に捕らえられている。
引き取りに行くか……。
「すいません。うちの子が……」
「あなたも入ってるじゃないですか!」
「そんな固いこと言わないで……」
こちとら引き取りに来たんだよ。
「まあいい。親なら子供の管理をきちんとしたまえよ。子供は自由だから親が目を離すとこうなるからな」
「はーい」
子供産んだことないんだけどね。
生理は来てるし産める体にはなってるんだけどさ。相手がいないのよ相手が。どこかにいい王子様いないかなー。っていつも考えてる。
「ん?」
その時だった。
なにか、影が差す。雲はない晴天の日だったんだ。なのに、黒い影が地面を差した。上空を見上げると何かが飛んでいる。
そして、その飛んでいるものが地面に降り立ったのだった。
でかいドラゴンだった。
「グルァァァァァァ!」
咆哮を上げる。
「ワイバーン……! 住人を避難させろ! 戦えるものは応戦してくれ!」
《緊急クエスト:ワイバーン討伐 を受けました》
強制受注か!
ま、戦えっていうことなんだろうけど……。ワイバーン。竜種……。この世界で竜ってあまり見かけない。戦ったことが私はあまりない。
汚濁竜……ぐらいしか見てないんだよね。だから、結構久しぶりじゃないかなー。
……うし。やるか。
「戦いだぜ! 腕が鳴るなァ!」
「絶景かな! あたしがここにいたのが運の尽きだぜ!」
ミカエルとゴエモンも戦う気満々ですね。