クエストの達成条件
ゴエモンから驚きの事実を聞いた後。
ウリエルとラファエルが用事があると帰っていった。
対する私もちょっと頭を悩ましている。それはクエストのことだった。忌み子の兄妹というクエスト。クリア条件は一体なんだろうか、と。
普通なら書かれていなくても説明があってそれにのっとればいい。だけどこれの場合唐突に起きて説明もなくて……クリアするためには何が必要なのか全くわからないんだ。
まだ手探り状態ってことなんだけれども。
……ま、なんとかなるか!
「あたしの用事はただ勇者を見に来ただけなんだけどな」
勇者か。私は見たなー。
「だが邪神という存在が悪って思われてんのが気に食わねえ。あいつは悪いことをするつもりねえだろうがよ」
まあそうだよなー。邪神=悪という方程式が王国の民の認知だし。
必要悪っていうことだから仕方ないとはいえ邪神ちゃんって結構不憫な立ち位置にいるんだよな。
ん? なんか人の気配がする。
後ろを振り返ってみると木の陰から誰かこちらを覗いていた。黒いシルクハットをかぶった男性だった。若いなぁと思うけれど。
ゴエモンも気づいてるらしい。
「はぁ。おい怪盗シルク。姿を見せねえか」
怪盗?
そういうとシルクハットの男は木陰から姿を現し、一瞬でゴエモンとの距離を詰める。そしてナイフで掻っ切ろうとしていた。ゴエモンはそれをいなす。
はじかれたナイフが宙を舞った。
「随分なご挨拶じゃねえか。久しぶりだってえのによ」
「はは、敵わないな。これでも強くなったと思うんだけどなぁ」
「あたしから見たら雑魚だ。で? お前も今回の目的は勇者見学か?」
「それもあるけど、面白い情報が入ってね」
「聞こうじゃねえか」
「盗賊の職に就こうとしている勇者がいるらしくてね。泥棒である僕たちに師事する可能性もでてきた。もし来たら僕は泥棒スキルを教えてあげるつもりだけど……。ゴエモンはどうするか聞いておきたくてな」
「才能による。第一、あたしゃもう才能ある子一人みっけてんだ。その子より上じゃないと話になんねえな」
と、ゴエモンはハクビを見る。ハクビたちはさっきから黙ったままだ。ナイフをじっと見つめている。ちょんと触ってはびくってなって手を放している。
「へぇ? あ、君たちははじめましてか。僕は怪盗シルク。君たちはただものじゃないと思うね」
「それはまあそうだろう。ミキは神様だぜ? その後ろの二人は天使だっつうーんだから驚くもんだぜ」
「……神様ならただものじゃないなぁ。できるだけ対立したくないものだね」
嘘くさいけど……。
でもなんだか信用できそうな気がする。
「さて、僕は早速見に行くとするけどどうする?」
「あたしも行こうかねぇ。ミキたちはどうすんでェ?」
「なんとなくついてくよ。暇だし」
クエストの達成条件につながるヒントがあるかもしれないしね。