忌み子の兄妹 ①
何かが木々の間から走ってくる。
息を切らし、何かから逃げているように。肌は白く、髪も白い幼い少年少女。息を切らしてでも逃げている相手は人間だった。
は?
「ひいっ!?」
「うん?」
私の姿を見て少女たちはまた方向を転換しようとしていた。その矢先。
少女が足首をひねっていた。そのまま転んでしまい、少年もそれで足を止めている。……あの人たちから逃げているって認識でいいんだろうか。
とりあえず助けよう。
「君たち」
「――っ!!」
「ああ、なんもするつもりはないよ。私の後ろに隠れていな」
と、その時だった。
声がした。
「おいあんた! ここに真っ白いガキ二人が来なかったか?!」
「あの忌み子どもめ……!」
忌み子?
「そんなやつ来てないけど?」
「ちっ……。くそが……」
その時だった。
「お兄、ちゃん?」
少女のほうが声を出してしまう。
男の人たちはその声に反応し私の後ろを覗き込んだ。そして「いたぞ」と言うと男の人たちが集まってくる。
「てめえ! かくまってやがったな!」
「……へぇ。やるの?」
「死にやがれ! 忌み子をかくまうものはすべて鬼の子だ!」
手にしたスコップを振り下ろしてくる。
それを躱すけれど少年たちを庇いながらの戦闘はきつい。ルシファーたちを呼ぶとしようか……。とはいってもチリンたちはすぐに来れると思わないし……。
「四天使召喚!」
ガブリエル、ウリエル、ラファエル、ミカエルを呼び出した。
「おう? 突然どしたぁ?」
「下界! 目の前には男?」
「ふふ、なにかあるみたいですねぇ」
「……なんだかわからないが戦うんだろうか」
「戦いだと!?」
ウリエルは状況を整理しているらしい。
「男の子たちを保護してて。私守りながらの戦闘は得意じゃないの」
「女に守れるかよ!」
すると、ミカエルが剣でスコップを弾き飛ばした。
男は腕を押さえその場に蹲る。
「手出しはさせないぜ? なんだか知らねえがいじめてんじゃねえぞ」
「ミカエルさーん。殺しちゃだめですよ~」
「わあってる! ミキ様。ここは私に任せてくれや! 少年たちを連れていって! 私はすぐに追いつくぜ!」
「なら頼んだよ!」
私は少年たちの手を引っ張り逃げていった。
後ろではミカエルの叫び声を聞きながら。
《クエスト:忌み子の兄妹 を受けました》
少し距離はできただろう。
私たちは適当な場所を見つけ座った。少年たちはまだ警戒しているようだけれど助けた甲斐もあって恐る恐る座ったのだった。
「で、なにがあったの」
「……お姉さんたちはこの見た目嫌じゃないの」
「見た目?」
特に嫌じゃないけど。
「あの、ミキ様。人間では白い髪に白い肌でオッドアイで生まれた子は忌み子として扱われるらしいです。忌み子は忌み嫌われており迫害を受ける毎日だとか。以上ガブリエル情報でした」
ほう。
忌み子の評価はよくないんだな。白い髪に白い肌、オッドアイのなにがいけないんだろうか。悪魔だと思われるからだろうか? ヴァンパイアってこともあるのかな? でもヴァンパイアってだいたい赤い目じゃないか?
「俺たち忌み子だぞ……! 悪魔だろ? ほら、悪魔に見えるだろ? やっぱりあんたも……!」
「……いや、本物の悪魔なら私見てるからなあ」
ベルゼブブとかね。
悪魔っていう外見からは程遠いけどね。
「助けてくれたことは感謝する……! けれど俺はお前らを信じたわけじゃない!」
「はは、警戒心が強いな……」
なにもするつもりはないけどね。
……あ、そうだ。
「君、名前はなんていうの?」
「……そんなもの聞いてどうする」
「いや、呼びにくいでしょ。少年とか呼ぶわけにもいかないし」
「……ハクビだ。こっちは妹のメアリ」
ハクビくんとメアリちゃん。覚えた。