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Another Arcadia Online  作者: 鳩胸 ぽっぽ
第六層エリア 【誇り高き獣】
323/856

英雄の幼少期

ちょっと胸糞?です。

 それは、悲劇だった。

 ある一人の女が槍を手にし、果敢に目の前の魔物に向かっていく。いや、女というには些か幼すぎるかもしれない。年端も行かない少女が槍をもっていた。


 少女は大人顔負けの実力を持っている。だがしかし、無敵、というわけでもなかった。


 「はああああ!」


 少女が持つ槍は敵を貫く。

 猛進撃は止まらない。人間より力は上……にはなっていた。すでに歴戦の戦士みたいな実力を持っている。それが悪かったのかもしれない。


 王国の上層部の騎士に目をつけられてしまった。


 ある日の事。


 「えーっと、おつかいは……」


 少女は母親から頼まれたものを買いに来ていた。少女の母親は普通の人。だが少女は母親を慕っており大好きでいる。母親も優しく時に厳しい。いい母親だった。


 「クー・フーリン、だな?」

 「……なに?」


 少女は声をかけてきた鎧を着こむ男性を睨んだ。

 男性は笑っている。気味が悪いと思えるような笑みを浮かべていた。少女は危険を感じ槍を構える。逃げる、という選択肢は彼女の中にない。

 立ち向かってくるのならば応戦するのみだった。


 「そんなに構えないでくださいな。僕はただお話に来ただけですよぅ。国の騎士にならないか、とね?」

 「……あいにくそんなのに興味はない」

 「ははは、なくてもなってくださいなー。大事な母親、どうなるか知りませんよ?」


 其の言葉が少女を怒らせた。

 有無を言わさず槍でつく。だが、驚いたことに目の前の男性は少女の槍の一撃をかわした。少女は驚いていた。並みの男性なら普通は避けれない。避けるほど反射神経がよくない。


 「……私のお母さんに何するつもりだ!」

 「ふふ、何するつもりでしょうねぇ。これは取引です。私の部下がすでにもう向かっているのでは?」

 「うるさい!」


 槍で何度もつくが当たる気配はなかった。

 少女は我を忘れそうになっている。だが、まだ化け物にはならなかった。まだ薄い希望があったから。母親が無事だという希望が。


 だがしかし、それも打ち破られる。


 「フー!!」

 「お母さん!?」


 お母さんが、兵士に剣を突き立てられていた。

 それを見た少女は槍を手にし兵士を貫こうとする。だがしかし。それはできなかった。なぜなら、兵士の一人が後ろからお母さんを切ったのだから。


 「お母さん!」

 「ふー……。こんな、クズ共に……なるんじゃない。大丈夫。傷は浅いよ」


 それを聞いて安心したのだが。

 

 「ほう? ならば、首でも切ろうか」


 そういった兵士がいた。

 兵士はお母さんの髪を掴み、首に剣を当てている。少女は、もう、自我を押さえるのが無理だった。

 槍を投げてその兵士の心臓を貫く。兵士は何が起きたかわからず、ただ胸の槍を見るばかりだった。そして、その場に倒れる。


 「フー!」

 「よくもおおおおおおおお!!!」


 お母さんの声に反応しない。我を忘れていた。


 槍をぶん回し兵士を一人一人貫いていく。

 兵士は応戦を試みるも無様に死んでいくばかりだった。

 

 「おおおおおおおお!!」

 「フー!」


 その時だった。

 気味悪い笑みを浮かべていた男に槍を向けられる。気味悪い男はにやつき、そして……。母親の元に逃げた。

 そして、母親の後ろに隠れる。


 「あなた……!」

 「ここで、死ぬわけにはいかないのでね……。なーに、あなたのお嬢さんを信じてくださいよ」

 「クズ……!」


 希望はもうなかった。

 母親の胸に、深く、槍が突き刺さった。目の前のが見えてない少女によって。母親は貫かれた槍を掴む。痛い。倒れそうなのをこらえた。


 「フー!」


 その声で少女は我を取り戻す。


 「おかあ、さん?」


 目の前の状況を見て、把握するのに数秒かかった。


 「お母さん!? えっ、いや、私は……」

 「ふ」


 お母さんは名前を呼ぶこともできなくなった。

 少女は絶望する。自分が自分の大好きなお母さんを殺めてしまった。殺してしまった。泣き叫び、喚く。少女の拠り所を自分の手でつぶしてしまった。


 「うわあああああああああああああああ!!!!」


 取り乱す。母親の血で体が汚れまくっていた。


 「バカなやつですねぇ。さて、今のうちに」


 そして、少女の首に首輪がまかれるのだった。








 そして、国のいいなりになり、使い古された少女は売却された。


 「……お母さん」


 今での少女の中にお母さんを殺したという絶望が、ある。

 忘れられていない。隷属の首輪がまかれていても、その強い絶望だけは忘れることがなかった。


 「……頑張る。お母さんを殺しちゃったんだから……贖罪のために戦う」


 少女――クー・フーリンは決意した。














過去話です。

本当はミキたち書こうかな―とは思ってたんですけどね。なんか過去話(設定)が思い浮かんだので。こんな悲しい過去がありましたとのことだけ。

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いずれ王となる君に~部下である剣士の私はその才能をゲームでも発揮します~
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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