防具ができた
第二層エリアに戻り、レベル上げをしていたとき、フレンドコールが届いた。
「はい、ミキです」
『おーミキ! よろこべ! やっと装備ができたぞ!』
私はすぐに飛んでいった。
先ほどの電話の主はローイさんだ。
ローイ工房まで急いでかけていくと、満身創痍の笑顔を浮かべたローイさんが腕組みをして待っていた。さながら本物の職人のように感じちゃったよ。
「ふぅ。長いこと待たせちまったな!」
「ローイさんやりきった顔してますね」
ものすごい笑顔で近づいてくる。ちょっと不気味っていうか……。
「本当はもっと早めにできてたんすよー? ただ親方があの可愛い精霊王に似合わねえっていってなんども作り直してんたんす」
「えっ、か、かわっ?」
か、可愛いだなんて、そんなあ……。
ローイさんは褒め上手だなあ! 私はおだてられるのに弱いんだよお。えへへ。
「余計なことを言うな! ほれ、これが防具だ。今持ち合わせあるか?」
「あー、この防具いくらですかね」
「うーむ。二万近くが妥当だろ。それほど材料費はかからなかったからな」
「二万……」
カモシカ貯金もすでに使い切ったし、あるかなあ。
……ぎりぎり足りた! 残高三百円になっちゃうけど!
「足りました。では、これお金です」
「おう。んじゃ、ほいと」
《ローイさんが下級精霊装備一式を渡そうとしています。受け取りますか? はい/いいえ》
はいを選ぶ。
イベントリには下級精霊装備という名前の防具が一式入っていた。早速装備してみると、白いワンピースみたいな服装。
なんか夏のひまわり畑にいそうな格好だなあ。防御が+10で、魔法防御が+21という結果だけど。防御があまり上がってない……。
……まあいいや。当たらなければいいんだし! ……かわすのとかちょーっと自信ないけどさ。
「ありがとうございましたー! これ装備して戦ってきますねー!」
といって私は、ローイ工房を後にした。
「……いいんすか? 嘘ついたままで」
「嘘? 何がだ?」
「いや、お金っすよ。二万じゃ……赤字っすよね? つかったのメタルカモシカのレアドロのメタルカモシカの皮じゃないっすか。あれ、十万はくだらないはずじゃ」
メタルカモシカは出現もまれであり、倒すと経験値がものすごくたまる。
素材ももちろん落とすのだが、ほとんどは角しか落とさない。稀に、皮も落とす。その皮を二枚使用し、あの防具を作り上げた。
本来の値段では軽く三十万はつけるだろう。だが、ローイは二万近くと嘘をついた。ローイなりの優しさでもあった。
「あいつにはすぐに作ってやれなかったし、それにチリンの紹介だからな。かまわねえ」
「チリン?」
「ああ。チリンってやつはあいつの親友なんだ」
ローイは作業場に戻っていった。
「チリンよ、これでいいんだろ? あいつには快くゲームしてもらうためにはこれでいいんだろ?」
ローイは鉄を打ちながらそうつぶやいた。