天使たちの夢現 ③
ローイたちは装備の案を考えると出ていってしまった。
難しい要求かもしれない。けれどもやらなくちゃいけない。きっとイベントをクリアすると何かがあるはずだから。
あとすること……あっ!
建築!
建物どうする! 天界だと新たに作ってもらうしかないし、見取り図とかどうしたいとか考えたほうがいいよね。飲食店ならまだしも……。
「……チリン。ちょっとどこか大工いないかな」
うちには大工スキルも違いない。
このギルドホームを建設した店にまたいくのもいいんだけど、忙しそうだからな……。ギルドホームの建て替えなどの依頼が今多いそうだ。
「とりあえずギルドの規模を大きく……しなくちゃいけない」
私は20人くらいがちょうどいいと思っていた。けれども店を経営するのなら自分たちで作るか買収をしなくてはならない。けれども同盟はもうできないし、買収するにしても釣る餌がない。ならば作るしかないだろうって。
買収する方式で行きたいけど……。どこがいいかな。
「こんなかで一番情報を持ってるのは?」
そう聞くと手を上げたのはマグダッド。
「よし。マグダッド。この街に個人経営の飲食店ある?」
「あるよ。少ないけどね。”大衆食堂”と”なごむ亭”と”かさご庵”の三つ」
少ない。まあ、あるだけいいか。
この三つに買収の話を持ち掛けよう。ダメだったら規模を上げる。雇うしかない。
「その三つで一番美味しいのは?」
「なごむ亭かな。料理しているのは現実で料理人をしてる人らしい」
なるほど。ならば最初はなごむ亭かな?
なごむ亭にやってくると店員の人が身震いしていた。
そういえば私このゲームできちんとした食事なんてしてないな。まずいけど携帯食料で済ませていることが多い。
「いらっしゃいませ」
「店長いる?」
「おります! てんちょー! お、お客さん!」
なんかすごい慌てぶりだな……。
店長が奥から出てくる。
ものすごくひょろい…。がりがりに痩せている。いや、うん、大丈夫っていうほどひょろいんだけど。
「おわっ! ミキさん!」
「こんにちは……」
「こんな上客が来てくれるなんて! どうぞどうぞ! お好きな席に!」
「あ、いや、今日は店長にちょっと聞いてもらいたい話がありまして」
食べるのはあと。
ここからが本番。うまいことに交渉できるか。ただそれだけ。
回りくどい言い方は私は嫌いだからまっすぐ。まっすぐ頼みこもう。
私たちは別室に案内された。
そして、お茶をだされる。
「それで私に聞いてもらいたいこととは?」
真剣に聞くそぶりを見せてくれるのはうれしい。
快く話せるよ。
「……実は、私たちが考えていることに貴方様の店が必要なのです」
「考えていること?」
私はすべてを話した。
天界の復興のために天界に店を建て替えてほしいと。費用はすべてこちらもち。買収されてくれないかと素直に告げた。
目の前の店長は、目をつぶってしまった。
「どうでしょう。ダメでしょうか」
「んー、まあ、立地はどこでもいいし構いません。さすがに材料費はうちで持ちますよ。店の代金だけでも結構使うでしょ」
「……え?」
いや、そんなあっさり?
私はてっきり断られるものだと……。
「そんなあっさりでいいんですか?」
「いいんですよ。僕は別にこだわりとかじゃなくてただ食べてほしいだけですから。それに、ミキさんの店ともなると箔が付きますからね。こっちもメリットだらけなんです」
なるほど。私の有名税を使うわけか。
「この店は……もう使わないってことになります、よね?」
「店員が少ないから全部天界のほうに持ってくことにはなりますねぇ。この店は使わないことになります」
「それでもいいんですか?」
「いいんですよ。常連の皆さんには申し訳ないですけどね」
……よかった。
ほっとしたよ。断られる気満々だったからね……。
すいませんが明日の更新は多分ないです……。