ローイ工房
そういえばスキル欄の精霊の眼と精霊の祝福と精霊の従属について何も触れていなかった。
なんだろう。
・精霊の眼
精霊王固有のスキル。すべてのものを見通す力を持っており幻惑、魅了を無効とする。
・精霊の祝福
精霊が行うことのできる祝福。精霊王の場合祝福をかけた人の魔法の威力が2倍になる。ただし一人にしか有効にならず次の者にかけた瞬間に最初にかけた者の祝福の効果は途切れる。
・精霊の従属
世界各地に存在している精霊を従わせることが可能になる精霊王固有のスキル。
……わあ。やばそう。
ということは私には幻惑と魅了が効かず、魔法使いの支援もできるってこと?
うーむ。じゃあ魔法使いと組んだ方が楽ということかな。
よし、スキルについてはわかった。あとは魔法の全属性精霊魔法についてだね。さっきやったように威力がものすごく高かった。
多分レベルが10というのも威力が高かった一因だろう。これがレベル1ならまた変わっていたと思う。
スキルのレベルって最大どのくらいだろうか。いきなりマックスということもないだろうし、使っていけば上がるんだと思う。
ただ闇雲につかえばレベルがあがる…なわけはないだろう。そんな一筋縄じゃないはずだ。
ああ、そうそう報告。1レベル上がったよ!
相変わらず力は上がんなかった。たぶん力は上がることはないと思う。
相変わらず紙装甲で防御が11というものすごく低い数値。
魔法防御は高いけどこれはなかなかやばいんじゃないだろうか。魔法主体で闘ってくる敵ならなんとかなるけど物理相手だと詰むよね……?
「装備……買おう」
こりゃ防御を少しでも底上げしないとやられる!
「装備買うの? なら私いいところ知ってるから案内してあげようか」
「あ、おねがい」
「らっじゃー!」
来たのは一つの民家。
玄関の前には『ローイ工房』と武骨な文字が書かれていた。
これって家……? これが工房なの?
「おじゃましまーす。ローイ。いるー?」
「ああ。いるぞ。何の用だチリン」
呼ばれた男性はタンクトップで黒髪のぼさぼさ髪。言っては何だけどニートにも見えなくはない風貌をしている。
え、お二人知り合いなの?
「ああ、紹介するね。リア友のミキ。で、こっちがβテスターからの知り合いのローイ。35歳」
「よろしくな。でミキっつったか? おめえは俺に何の用だ」
「ミキと私の分の防具を作ってもらいに来た」
「……そうかい。まあ、チリンの紹介なら断るわけにはいかねえな。おい。あんた職業は?」
……職業?
「な、なんですかそれ」
「知らないのかよ。このゲームでは職業登録所にいって職業をまず登録するんだろうが」
ええ、そうなの!?
私ログインしてすぐに魔物狩りに行ったんだけど!? え、チリン。もしかして知ってて黙ってたのかな?
「まず職業の必要性についてから教えないとダメなのか? そこは説明してるのか?」
「そこも一切してない。すっかり忘れてた……」
「おいおい……。んじゃ俺から説明してやるけどよ。この世界じゃ職業というものはついていたほうがいいんだ。もちろんなくても困ることはないが、できるだけついていたほうがいい」
「ええ、なんでですか?」
「その職業専用のクエストや、職業補正があるからだ」
職業補正?
「職業補正ってもしかして職業に応じてステータスが上がるということですか?」
「ああ、そうだな。俺みたいな鍛冶師を選ぶとちからときようさに補正が入る。その代りすばやさががくんと落ちるがな」
なるほど。何かが上がったら何か下がるという補正か……。
うーん。だとするとそこから想像するに魔法使いという職業があったとして、それについたらMP、まりょく、まほうぼうぎょが上がる代わりにHP、こうげき、ぼうぎょが下がるということになりそうだ。
うーん。私の場合逆にこのままのほうがいいのかもしれないな……。まりょくとか上がるのは魅力的だけど防御下がったらねえ……。
「まあ、ミキは魔法使いタイプと見た。魔法使いをおすすめするぜ。まりょくとまほうぼうぎょが上がる代わりにちからとぼうぎょが落ちるが……そこは装備でなんとかするしかないだろうな。俺がそれに合わせて作ってやるから……。まずお前のぼうぎょはいくつだ」
「えっと、たしか今は……11だった気がしますね」
「……は? 低くねえか。初期プレイヤーは揃って13なはずだぞ。それ未満の数値になるとしたら……もしかしてお前、チート種族か?」
「あー、精霊王、らしいです」
「まじか!? ならお前さんに職業はいらねえな! むしろ職業あったら足枷になっちまう!」
「はい。アドバイスはありがたかったです」
職業のことも少しは頭に入れておこう。
大事になるかもしれないし。それより職業専用クエストっていうのも少し気になったりする。鍛冶師であれば王国軍の武器を作ってくれというクエストもあるかもしれないし、その数次第で戦争に勝ったりとか負けたりとか……。
……いや、ないね。
「……お前さんにあう防具だろ? うーむ。防御力をあげたほうがいいんだろうからな……。鎧というのも似合わねえしどうすっかなあ……」
「私のもお願いねローイ」
「ああ、わかってんよ。うーむ。これは試行錯誤する必要がありそうだ……! 少しだけ時間をくれ! そうだなあ……三日後。三日後にまた来い! そん時までに仕上げてやる! ほら、でてったでてった! 俺は今から集中してえから帰れ!」
と追い出されてしまった。
……防具かあ。なにできるかなあ。