第六回イベント ⑤
こう指揮をするのは第四層ボス以来だと思う。
私は戦略家でも戦術家でもない。戦争なんてありがたいことにしたこともなければ誰かと対立するなんてことはなかった。対立っていうのは対等な立場にあってこそ起きるからね。
「さーてと、どうしたものか……」
目の前には大量の軍勢が押し掛けていた。
どうやらわき目もふらず突撃。全戦力をこちらに向けているようだ。狼たちやトラの獣人たちもいるし、プレイヤーもいる。
こっちは草食系が多く、あっちには肉食系の動物が多いみたいだ。
さて、どうしよう。
この人数。私でもちときつい。
そして何より、若干だが人数が足りていない。
《ニルヴァーナの脱落を確認》
……なんてこった。負けるとは思っていたがまさか今とは思っていない。いやいや、まぁ、予想通りだけどここで負けるのは想定外だ。
となると、ガガトツはこちらに向かってるだろうな。厄介だぁ……。
「どうしよっかなぁ~……」
飛行スキルで空を飛び考える。
一小隊ならまだしもこんな大勢となると時間がかかるし何より隙だらけ。というか、私の作戦ってほぼ私中心に考えているからあてにならんのよ。
考えたら糸口が見つかる……んなわけがない。
「とりあえず、ベアンだけ護って……」
ベアンを倒されたら私たちの負け。
守りを固めるのはいい、んだけど、人員を割きすぎてもこっちがなぁ。難しい。指揮官というのはなぁ。作戦という作戦がない以上一から考える。
作戦があったらそこに則ったうえで考えればいいからまだ楽なんだろうけどな……。
事態は悪化した。
所詮は私たちは烏合の衆。相手側はきちんと作戦を立てている。
『私にできるだけ見つかるな』
ということだ。
隠れて潜伏しているところを危うくだけれど発見し、作戦を聞き出すことができた。私とできるだけで会わずにベアンを倒す。
……私の弱点わかってるのかっていいたい。
私はベアンを守らない理由は、誰かを守りながら戦うというのが基本的に苦手だから。私は周りをよく見る方だけれども、気を付けてるというわけじゃない。
一挙一動で相手の行動を読むなんて長けた技術は持ち合わせてもいないし、どこからどう襲ってくるかまでは流石に無理だ。
すべては私の反射神経だより。
守るということはなるべく気に掛けることをしなくてはならなくなり、そこに集中力が集中。周りを見れていたのに見れてなかったりもする。
まだ一対一ならまだいいんだけどね。複数だから困る。
神域に逃げるというわけにもいかないしな。そもそも、神域はプレイヤー以外は入れない仕組みとなっているためにベアンをそこに逃がすことは不可能。考えてやろうとしたけど無理だったんだ。
「……考えるのが嫌になってきた」
もうあきらめてみんな好きに暴れてしまえば逆にいいようになるんじゃないだろうか。
指揮なんてとらずそれぞれ思惑通りやれってんだ!
もう考えるのはめんどくせえ!
思考放棄こそ一番の作戦なんでは?