とんかつを作ろう ①
ギルドホームに戻り、ちょっとだけだけれどやりたいことをやることにした。
なにをやるかって? 料理だよ。
A2Oには料理システムがある。
まぁ、キッチン等用意しなければできないんだけど、簡単持ち歩きキッチンセットを購入したから私も料理できるというわけだ。
食材は買うか自分で用意するだけ。簡単でしょ?
「やろうやろうと思ってここまでやってなかったけどついにやる時が来た……!」
まず手始めに何作ろうかなー。
オムレツ? それだと簡単だし、もうちょいむずいのでもいいかもしれない。メニューにこうも悩むとは思わないよねえ。
うーん、何作るか……。
「ルシファーは何食べたい?」
「私は…神の作るものなら何でも」
それ困る返答だよなぁ。
とりあえず、簡易キッチンセットで作れるものに限られるからスイーツ系は論外でしょ? オーブンとかないしね。
フライパンで焼く、炒める、煮る、蒸す、揚げるくらいのものはできそうだからな……。
うーん。
「何悩んでるんすか?」
「あ、ユキショウグン。いいところに。何が食べたい?」
「へ? あー、今っすか?」
「そうそう今今」
首をひねらせ考えている。
「そうっすねぇ。ガツンとしたものは食いたいですねえ」
ガツンとしたもの……。ならば肉だな。
骨付き肉を焼く……というのも一つの手なんだけどそれだと簡単すぎて……。
「揚げ物がいいっすね」
「揚げ物か」
ならあれを作ろうかな。
私はまず買い出しに出かける。
八百屋によりキャベツを買って次に肉屋に行って魔獣豚のロース肉を買う。パン粉も買ってと。これでわかるだろうけど作るのはとんかつだ。
あとは小麦粉と卵。
「ないんですかぁ!?」
「ちょうど売り切れちゃってねえ」
卵が、ない!
とんかつ作れなくなる! それは嫌だよ! せっかく作ろうと決心したのにここで挫折なんて……するはずがない。
きっとどこかに卵がある。モンスターから奪えばいいんじゃないだろうか。
「おじさん! 卵ってどこで作られてるの!?」
「ここらへんだとベイクの岸辺ってところに生息してる滑鶏だねぇ。おじさんも冒険者にとってきてもらってるんだ。お嬢ちゃんも滑鶏の卵を取ってきてくれたら報酬を出すぜ?」
《クエスト:滑鶏の卵をとれ を受けますか?》
受けません。
なぜならとったら納品しなくちゃいけないからです。私は自分用で使いたいし受けることはまずないだろうに。
おじさんの頼みをやんわりと断って私はフィールドへと駆け出していく。
ベイクの岸辺は一度も行ったことがない。始めていく土地だし、気を引き締めていこう。